記録の書き方の重要性と実践【第3回院内研修】
医療現場では、患者様の診療において正確な記録を残すことが求められます。
医療記録は、単に患者様の診療内容を記載するだけのものではなく、医療サービスの質を向上させ、患者様の安心を守るために極めて重要な役割を果たしています。
当院では1月の院内研修として、「記録の書き方」をテーマに、記録の目的やポイント、当院においての記録の在り方について深掘りしました。本コラムでは、その研修内容の詳細をご紹介します。
■記録の目的
研修の初めに、医療における記録の目的を再確認しました。記録は単なる事務作業ではなく、医療現場においては以下の3つの重要な目的があります。
①医師の義務
医療記録は、患者様に提供した医療内容を後から検証できるように記録するものであり、これは医師の法的な義務です。
医師法第24条第1項では、診療後に遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載する義務が定められています。
患者様の健康状態や受けた医療行為に関する記録を残すことは、医師としての法的責任を果たすことに他なりません。
この義務を果たさなければ、後々のトラブルや診療の進行に支障をきたすことがあるため、記録を欠かすことはできません。
②診療報酬の根拠
診療報酬は、医療機関が患者様に提供する医療サービスに対して支払われる料金のことを指します。
診療報酬を正当に受け取るためには、実施した診療の内容が適切に記録されている必要があります。
記録が正確であることは、診療報酬を正当化する根拠となり、医療機関が適切な報酬を受け取るために必要不可欠です。
診療の内容や実施された検査、治療行為が正確に記録されることにより、後からそのサービスに対する対価が正当であることが証明されます。
③適切な医療を提供するため
患者様に適切な医療を提供するためには、過去の診療記録や病状、治療の経過を把握することが重要です。記録は、今後の治療方針を決定する際の資料となり、患者様に安全かつ効果的な医療を提供するための基盤となります。正確な記録がなければ、次回の診療時に誤った判断を下すことがあり、その結果として患者様にとって不利益を与えてしまう可能性があります。このような事態を防ぐためには、継続的に記録をし、情報を一貫して共有することが不可欠です。
■記録の質を高めるために
記録の目的を理解した上で、記録の質を高めていくため、”SOAP”というツールに関して今一度共有をしました。
SOAPとは医療現場で広く使われている記録のフレームワークで、患者様の状態や治療過程を整理して記録するためのツールです。
SOAPは、以下の4つの項目から成り立っています。
S (Subjective):主観的情報
Sは、「主観的情報」を指し、患者様が自分の症状について伝える内容や、患者様が感じていること、病歴などの個人的な情報が含まれます。この情報は、患者様の言葉を基に記録することが重要です。
O (Objective):客観的情報
Oは、「客観的情報」を指し、医療従事者が観察できる情報、測定されたデータ、検査結果などが含まれます。診察や検査を通じて得られた事実に基づく情報です。
A (Assessment):評価・分析
Aは、「評価・分析」を指し、患者様の症状や客観的なデータをもとに、医療従事者が行う評価や診断を記録します。この部分では、患者様の状態についての解釈や見解が述べられます。
P (Plan):計画
Pは、「計画」を指し、評価に基づいて今後の治療や対応についての計画を記載します。これには治療の具体的な方針や、必要な検査、次回の診察時期などが含まれます。
これらを適切に分類して記録することで、一貫性のある記録、迅速な情報取得、継続的な評価、患者様の状況把握の精度向上につながり、記録の質を向上させることができると考えています。
■シミュレーションを通じて記録方法を学ぶ
目的やSOAPを再確認した後、診療のシミュレーションを通じて実践的に記録をする時間を設けました。
このシミュレーションでは、実際に診察を行う場面を想定し、どこにどのような情報を記載するのか、症状に対して診断をつけるためにはどのような情報が必要なのか、患者様に寄り添ったサービスを提供するためには記録においてどのような情報を記載するべきかを、全職種で話し合いながら進めました。
普段は診察室に入る機会がないスタッフも、患者役や実際に記録をしてみることで、診察室で行われている患者様とのやり取りや、医師の考えを共有することができました。
これにより、医師の視点や診察の流れが全職種に伝わり、実際の現場で求められる記録がどのようなものかを理解することができました。こうしたシミュレーションを通じて、チーム全体で患者様に対する医療の質を高めることができると考えています。
■今後
今回の研修を通じて、医療記録に対する意識が高まりましたが、医療は日進月歩で常に変化しています。
また、患者様一人一人の状態やニーズも異なるため、記録に関して固定された「正解」は存在しません。
これからも、医療現場での記録の重要性をスタッフ全員で共有し、精度向上に向けて継続的に努力してまいります。
定期的な研修やフィードバックを通じて、記録の質をチェックし合う習慣をつけていくことや、デジタル化を進めることで、患者様に安心していただける、よりよい医療サービスの提供を目指していきたいと考えています。(看護師長.T)
-
診療時間
月 火 水 木 金 土 日 10:00~13:30
受付は13:15まで● ● ● / ● ○ / 15:00〜19:00
受付は18:45まで● ● ● / ● / / 休診日:木・日・祝・第3水曜午後(院内研修のため)
○9:00~13:00 受付は12:45まで -
交通案内
東京都練馬区練馬1-18-8 犬丸ビル2階練馬駅から徒歩2分