【第3回】MRI画像の種類について
「MRIってどんな画像が撮れているの?」
検査を受ける患者さまから、よく聞かれるご質問です。
MRIと一口にいっても、実は1種類の画像だけではありません。体の構造や病変をくっきり映すために、撮影方法を変えて複数の画像を撮影しています。
実は検査中に聞こえる「音の違い」も、その画像ごとの違いに関係しています。
「音のリズムが変わった」
「トントンという音からゴーッという音に変わった」
と感じたことがあるかもしれません。
それはまさに、異なる種類の画像を切り替えて撮影しているタイミングなのです。
もし余裕があれば、検査中に音の変化にも少し注目してみてください。
「今はT1?それとも血管を撮ってるのかな?」と想像してみると、ちょっとした探検気分で検査時間が短く感じられるかもしれません。
今回はねりま脳神経外科で実際に行っている「頭部MRI」を例に、6つの代表的な画像の違いや役割をご紹介します。
まずはここから|MRI画像には種類があるんです
頭部MRIでよく使われる主な画像は、次の6つです。
- T1強調画像(ティーワン)
- T2強調画像(ティーツー)
- T2*強調画像(ティーツースター)
- FLAIR画像(フレアー)
- MRA(血管撮影)
- 拡散強調画像(DWI)
名前だけだと少し難しく感じますが、大丈夫です。
「何を写すための画像なのか」「どんな特徴があるのか」をわかりやすく解説していきます。
T1・T2強調画像|MRIの基本
この2つはMRIで最も基本となる画像です。
実際に画像を見てみましょう。
T1強調画像:水分が黒く、脂肪が白く映る
T2強調画像:水分が白く、脂肪が黒く映る
例えば脳の中心にある「側脳室」は脳脊髄液(=水分)で満たされています。
そのためT1では黒く、T2では白く映ります。
また、脳の外側にある灰白質と内側の白質も違いがあります。
脳は表面部に神経細胞の本体が集まっており、この部分を灰白質といいます。
また内側には本体につなぐためのケーブル(軸索)が多く存在しており、この部分を白質と呼びます。
T1強調画像では外側の部分(灰白質)が黒く、内側の部分(白質)が白く映ります。
逆に T2強調画像では外側の部分(灰白質)が白く、内側の部分(白質)が黒く映ります。
部位 | T1 | T2 |
---|---|---|
灰白質 | 黒 | 白 |
白質 | 白 | 黒 |
● T1画像 :脳の形や構造を見るのに向いています。
● T2画像 :水分を多く含む病変(炎症や腫瘍)を見つけるのに役立ちます。
一般的に腫瘍や炎症が起こるとその周りは浮腫が起きます。つまり水分が多くなるのです。そのため水分が白く写るT2強調画像が適しています。ただ、白く写ったものがすべて病変とは限らないのでその点は注意しなければなりません。
FLAIR画像|水を消すことで見えるもの
FLAIR(フレアー)画像は、T2画像の進化版です。
T2画像では水分が白く映るため、脳室のような正常な水分と、病変が見分けにくくなることがあります。
FLAIRではあえて水分を黒くすることで、隣接する病変との違いがはっきりします。
特に「脳室のそばにある小さな病変」などは、このFLAIR画像で見つけやすくなります。
画像の種類 | 水分 | 脂肪 | 灰白質 | 白質 |
---|---|---|---|---|
T1 | 黒 | 白 | 黒 | 白 |
T2 | 白 | 黒 | 白 | 黒 |
FLAIR | 黒 | 黒 | 白 | 黒 |
細かい病変の見落としを防ぐため、FLAIR画像も欠かせない存在です。
T2*強調画像|出血の見落としを防ぐ
「スター」と読むT2*画像は、磁場の乱れにとても敏感です。
鉄分が多い「古い出血」や「石灰化」があると、MRIの磁場が微妙に乱れます。T2*画像は、その乱れをキャッチして写すことができます。
普通のT2画像では気づきにくい出血も、T2*画像なら見逃しません。
MRA|血管の状態を立体的に見る
MRAは「Magnetic Resonance Angiography」の略で、脳や首の血管を調べる画像です。
狭くなった血管(狭窄)や、ふくらみ(動脈瘤)、血管の裂け目(解離)などを診断できます。
コンピュータ処理によって、血管部分だけを立体的に表示することも可能です。
拡散強調画像|脳梗塞の早期発見に欠かせない
Diffusion Weighted Imaging(拡散強調画像)は、水分子の動き=「拡散」をとらえる画像です。医療従事者の間ではよく「ディフュージョン」と呼ばれます。
今までと比べると輪郭があいまいというかもやもやした画像です。
この拡散強調画像は一言でいうと「水分子の動きを画像化したもの」です。体の中の水分は普段あらゆる方向に動き回っており、これを「拡散」と呼びます。
正常な脳では水分が自由に動きますが、脳梗塞や腫瘍の周囲では動きにくくなるのが特徴です。
この「動きにくさ」を白く映すのが拡散強調画像。脳梗塞の初期診断には欠かせません。
保険診療と脳ドックでの撮影内容の違い
ねりま脳神経外科では、検査の目的に応じて撮影するMRI画像の種類を適切に調整しています。
基本的には以下のような構成で撮影を行い、症状や必要に応じて追加の撮影も実施しています。
- 保険診療の場合:
通常はT1強調画像を除いたすべての画像を撮影します。
撮影される画像の種類は以下の通りです。- T2強調画像
- FLAIR画像
- T2*強調画像
- 拡散強調画像(DWI)
- 頭部MRA(血管撮影)
- 脳ドックの場合:
上記に加えてT1強調画像も含まれ、さらに頚動脈MRAも撮影します。
脳だけでなく、脳へ血流を送る首の血管の状態まで、より詳細に確認できます。
特に脳ドックでは、脳神経外科専門医と放射線科医2名によるトリプルチェック体制をとっており、
さらに既往歴や生活習慣をふまえた総合評価を実施。異常の有無だけでなく、将来のリスクに備える「予防医学」の視点からサポートいたします。
まとめ|安心して検査を受けていただくために
MRIはただ写真を撮っているわけではなく、目的に応じて様々な種類の画像を組み合わせています。
「MRIって難しそう」と思う方も、どうぞご安心ください。
一人ひとりに合わせたやさしい説明で、安心して検査を受けていただけるようサポートいたします。
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