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後頭神経痛

後頭神経痛とは

この頭痛は「大後頭神経(だいこうとうしんけい)」「小後頭神経(しょうこうとうしんけい)」「第3後頭神経(だい3こうとうしんけい)」と呼ばれる神経の支配領域に生じる頭痛です。これらの神経は、それぞれが頭皮の違う場所の感覚を担当しています。

大後頭神経は首の骨から出て、頭の後ろから頭のてっぺんまでの感覚を担当します。小後頭神経は耳の後ろから側頭部(こめかみ)の感覚を、第3後頭神経は首の付け根から耳の下にかけての感覚を担当します。これらの神経のどれかに問題が起こると、その神経が担当している場所に痛みが現れます。

この病気は、よくある片頭痛や緊張型頭痛(肩こりからくる頭痛)とは全く違います。片頭痛は頭全体がズキズキ痛みますが、後頭神経痛は神経の通り道に沿って「電気が走る」ような鋭い痛みが特徴です。

症状の特徴

痛みの性質

後頭神経痛の痛みは「針で刺されるような」「電気が走るような」「ビリビリする」と表現される鋭い痛みです。数秒から数分程度と短時間で治まりますが、一日のうちに何度も繰り返し起こることがあります。痛みは突然始まって突然終わり、朝起きた時や疲れがたまった夕方に起こりやすい傾向があります。

痛む場所

痛む場所は、どの神経に問題があるかによって決まります。大後頭神経では首の付け根から頭のてっぺん近くまで、小後頭神経では耳の後ろからこめかみにかけて、第3後頭神経では首の付け根から耳の下の辺りが痛みます。ほとんどの場合、左右どちらか一方だけに起こります。

誘発要因

軽く触れただけでも激しい痛みが起こることがあります。髪をブラシでとかす時、枕に頭を置く時、シャンプーをする時などに痛みが走ることがよくあります。これは神経が過敏になっているためです。

原因

日常生活要因

パソコンやスマートフォンの長時間使用による前かがみ姿勢が主な原因です。

この姿勢により、僧帽筋(そうぼうきん)という肩から首の大きな筋肉、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という耳の後ろから鎖骨に向かう筋肉、後頭下筋群(こうとうかきんぐん)という頭蓋骨付け根の小さな筋肉群が緊張します。

これらの筋肉が硬くなると、筋肉の間を通る後頭神経を圧迫してしまいます。

ストレスの影響

精神的ストレスは筋肉を緊張させ、自律神経系にも影響を与えます。血管収縮や痛みに対する感受性の増加により、軽い刺激でも強い痛みとして感じるようになります。

外傷

交通事故での「むち打ち症」、スポーツでの衝撃、転倒による頭部・首の外傷も原因となります。外傷により形成された瘢痕組織(傷跡の組織)が神経を圧迫することがあります。

診断

診断は主に症状の聞き取り(問診)と身体診察で行われます。医師は痛みの性質、場所、持続時間、誘発因子を詳しく聞きます。身体診察ではトリガーポイント(痛みの引き金となる点)を確認します。

大後頭神経のトリガーポイントは頭の後ろの出っ張りから指3本分外側、小後頭神経のトリガーポイントは耳の後ろの骨の出っ張り後方にあります。第3後頭神経は外後頭結節下部で正中近くにあります。

これらの場所を押して日常の痛みと同じ痛みが再現されれば診断の手がかりとなります。

必要に応じてレントゲンやMRI検査、血液検査を行い、他の疾患を除外します。

重要な鑑別疾患

病気の名前

痛みの種類

痛む場所

痛みの続く時間

その他の特徴

後頭神経痛

鋭い、刺すような

後頭部、側頭部

数秒〜数分

軽く触れても痛む場所がある

片頭痛

ズキズキする

頭の片側全体

4〜72時間

吐き気、光がまぶしい、音がうるさく感じる

緊張型頭痛

締め付けられる感じ

頭全体

30分〜7日間

肩こり、ストレスが関係

群発頭痛

激しく、えぐられるような

目の奥、こめかみ

15分〜3時間

目が赤くなる、鼻がつまる、涙が出る

帯状疱疹

焼けるような、持続的

神経の通り道

ずっと続く

皮膚に赤いブツブツや水ぶくれができる

三叉神経痛

電気が走るような

顔面

数秒

顔を触ると痛みが起こる場所がある

椎骨動脈解離

突然の激痛

後頭部、首

持続的

めまい、手足のしびれ、ろれつが回らない

特に鑑別が必要な疾患

椎骨動脈解離は首を通る重要な血管(椎骨動脈)の壁が裂ける病気で、後頭部に突然激しい頭痛が起こるため後頭神経痛と似ています。MRIでの鑑別が必要で、めまい、手足のしびれ、ろれつが回らない、複視(物が二重に見える)、意識障害などの症状がある場合は、すぐに救急外来を受診してください。

帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが再活動することで起こり、初期段階では皮疹が出る前に神経痛が先行することがあります。持続的で「焼けるような」痛みが特徴です。

治療方法

薬物療法

痛み止め:ロキソニン®やボルタレン®などの一般的な痛み止めを使用します。

神経痛専用薬:ガバペンチンやプレガバリンなど、神経の異常な興奮を抑える薬を使用します。

抗うつ薬:アミトリプチリンなど、痛みの信号を調整する薬で、特に夜間の痛みに効果的です。

筋弛緩薬:エペリゾンやチザニジンなど、硬くなった筋肉をゆるめます。

ビタミン剤:ビタミンB群(B1、B6、B12)で神経の修復を助けます。

神経ブロック注射

お薬だけでは改善しない場合には、痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬を注射します。多くの患者さんで即座に痛みがなくなり、効果は数週間から数ヶ月間続きます。

リハビリテーション

硬くなった首や肩の筋肉をストレッチで伸ばしたり、マッサージで緊張をほぐしたりします。正しい姿勢の指導も重要な治療の一部です。

予防と生活指導

姿勢改善

パソコンのモニターを目の高さに調整し、30分から1時間ごとに休憩を取って首や肩のストレッチを行います。枕の高さも重要で、横向きに寝た時に首がまっすぐになる高さを選びます。

ストレス管理

定期的な運動、十分な睡眠、趣味の時間を作るなど、自分なりのストレス解消方法を見つけることが大切です。

効果的な生活習慣

  • 週2-3回、30分程度の軽い有酸素運動
  • 首や肩の筋力を適度に鍛える運動
  • 長時間の同じ姿勢を避ける
  • 十分な水分摂取で筋肉の柔軟性を保つ

経過と見通し

後頭神経痛の見通しは一般的に良好で、適切な治療により多くの患者さんで症状の改善が期待できます。急に発症した場合、1-2週間で自然に良くなることも珍しくありません。

慢性化した場合でも、継続的な治療と生活習慣の改善により症状をコントロールすることは十分に可能です。重要なのは早期診断と適切な治療の開始です。特徴的な症状を認めた場合には、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

 

文責:井上剛(日本頭痛学会 日本頭痛学会専門医)

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