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三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)について

TACsとは

三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:たっくす)は、突然、片側の目の奥やこめかみに起こる激しい頭痛とともに、涙や鼻水が出るといった「自律神経症状」を伴う頭痛です。

発作は短時間ですが、非常に強い痛みが特徴です。

早期に診断し、適切な治療を受けることで症状を軽くすることができます。

この頭痛はあまり一般的ではないため、周囲の人に理解してもらえないことが多く、患者さんご本人やご家族にとって大きな悩みの種になることがあります。

しかし、最近では医学の進歩により、治療法が少しずつ整ってきています。

正しい知識を持ち、信頼できる医師とともに治療を進めることで、症状を大きく改善できる可能性があります。

 

TACsの種類

TACsは以下の5つのタイプに分類されます:

  • 群発頭痛(ぐんぱつずつう)
  • 発作性片側頭痛(ほっさせいへんそくずつう)
  • SUNCT・SUNA(短時間持続性片側神経痛様頭痛)
  • 持続性片側頭痛(じぞくせいへんそくずつう)
  • 上記に当てはまらない「TACsの疑い」

 

これらはすべて、「片側の強い痛み」と「涙や鼻水などの自律神経症状」を共通の特徴としています。

ただし、それぞれの持続時間や痛みの性質、発作の頻度には違いがあります。

 

病態と発症のしくみ

TACsの病態生理は多様で、以下の仮説が提示されています。

  • 視床下部の発作発生源説:視床下部は体内時計を司る重要な部分で、特に群発頭痛では、発作の規則性(概日リズム)や季節性があることから視床下部が発症に関与するとされています。

  • 神経ペプチドの関与:発作時にはCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やVIP(血管作動性腸管ペプチド)の濃度上昇が確認されていて頭痛の強さや頻度に関与していると考えられています。

  • 三叉神経副交感神経反射の過剰興奮:三叉神経の過剰な刺激が、涙腺や鼻の粘膜に作用し、涙が出たり、鼻が詰まったりする症状が現れます。詳しくは三叉神経節の活動が上唾液核を刺激し、副交感神経(翼口蓋神経節)を経由して涙腺・鼻腔粘膜を活性化、流涙や鼻漏を引き起こすと考えられています。

 

TACsの特徴と診断

群発頭痛

  • 強い片側の痛みが目の奥、上、またはこめかみに起こります。

  • 痛みは15〜180分続き、1日1回〜8回ほど反復します。

  • 結膜充血、涙、鼻づまり、発汗、まぶたの腫れなどが同時に現れます。

  • 発作中は落ち着きがなく、歩き回ることもあります。

  • 数週間〜数か月間続く「群発期」があり、その後数か月〜数年の「寛解期」があることが多いです。

診断基準(要約):上記のような症状が5回以上あり、痛みが激しく、診断に適う他の疾患がないことが条件です。

 

発作性片側頭痛

  • 片側の目の奥やこめかみに、2〜30分の強い痛みが起こります。

  • 発作は1日に5回以上出現することもあります。

  • 自律神経症状(涙、鼻水など)を伴います。

  • インドメタシンという薬が劇的に効きます。

診断基準(要約):上記の発作が20回以上あり、インドメタシンに完全に反応することがポイントです。

 

SUNCT・SUNA

  • 痛みはごく短く(1〜600秒)、片側に鋭い刺すような痛みが走ります。

  • SUNCTは「結膜充血」と「涙」の両方、SUNAはそのどちらか一方を伴います。

  • 1日に何度も繰り返します。

  • 一部の方は刺激によって発作が誘発されることもあります。

診断基準(要約):発作が20回以上あり、痛みの部位や自律神経症状、頻度などが一致することが必要です。

 

持続性片側頭痛

  • 3か月以上続く、片側のみの頭痛です。

  • 痛みの強さに波があり、急に痛みが強くなることもあります。

  • 自律神経症状を伴うことがあり、光や音に敏感になる方もいます。

  • インドメタシンが非常によく効きます。

診断基準(要約):持続する片側頭痛が3か月以上続き、インドメタシンで完全に軽快すること。

 

TACsの治療について

群発頭痛

  • 発作時には「スマトリプタン」の注射や「酸素吸入」が効果的です。

  • 発作予防には「ベラパミル」「リチウム」が日本で使用されます。

  • 「CGRP関連薬」が有効であることが海外では証明されていますが、現時点では日本では群発頭痛に対してはまだ使用できません。

  • アルコールやニトログリセリンで発作が誘発されることもありますので、群発期には注意が必要です。

 

発作性片側頭痛・持続性片側頭痛

  • インドメタシンが特効薬です。

  • 副作用として胃への刺激があるため、胃薬を併用することがあります。

  • 服用量やタイミングについては、医師と相談しながら決めていきましょう。

 

SUNCT・SUNA

  • ラモトリギン」や「ガバペンチン」「トピラマート」などが使われます(もともと抗てんかん薬で眠気やふらつきなどの副作用があります)。

  • これらは発作の頻度や痛みの強さを軽減することが期待されます。

  • 重症例では点滴や神経刺激装置を用いる場合もあります。

  • 治療の反応には個人差があり、試行錯誤が必要なこともあります。

 

まとめ

TACsは非常に強い痛みと自律神経症状を伴うつらい頭痛ですが、正しく診断され、適切に治療されることで、日常生活を大きく改善することができます。

「たかが頭痛」と思わず、少しでも気になる症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。

ご家族や周囲の方の理解と支援も、患者さんの生活の質(QOL)を高めるうえで大きな力になります。

頭痛が生活の大きな負担となっている方にとって、TACsについて正しく知ることは、回復への第一歩です。

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