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第2回「脳ドックで何がわかる? 発見される代表的な6つの異常を詳しく解説」

[2026.01.26]

この記事で分かること

  • 脳ドックで発見できる主な異常所見
  • それぞれの異常が持つ意味とリスク
  • 発見された後の対応方法
  • 生活習慣との関連性

はじめに

前回は脳ドックの基本についてお伝えしました。

今回は、実際に脳ドックで発見できる6つの代表的な異常について、検査経験から詳しく解説します。

大切なポイント: 異常所見が見つかったからといって、すぐに深刻な病気というわけではありません。多くの場合、早期発見によって、適切な対応の検討が可能な段階で見つかる傾向があります。

1. 大脳白質病変(加齢性変化)

どんな異常?

大脳白質病変は、脳の中で白質と呼ばれる部分に起こる変化のことです。

脳の毛細血管(微小血管)に動脈硬化を起こしたり、循環が悪くなったりすることで起こる変化だと考えられています。

これ自体は病気ではありません

この変化が多い方は少ない方に比べて脳梗塞や脳出血、認知症になりやすいことが知られていますが、これ自体は病気ではありませんので心配しすぎないでください

生活習慣病との関連

高血圧や脂質代謝異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)、高尿酸血症や糖尿病、喫煙や過度の飲酒があると増えやすいことが知られています。

2種類の白質病変

大脳白質病変は主に2種類に分類され、特徴や影響が異なります。

脳室周囲白質病変(PVH)

脳室(脳の中心付近にある液体がたまる部屋)の周囲にある白質に生じる異常です。

朝の支度を計画的に進める、複雑な料理をステップバイステップで完成させる、仕事の優先順位をつけるなど、「目標→計画→実行」のプロセス能力の低下が見られることがあります。

深部白質病変(DSWMH)

脳の深い部分(皮質下)にある白質に生じる異常です。

本の内容を理解する、複数の情報から判断を下す、数学の問題を論理的に解くなど、「情報処理・理解・推論」能力の低下が見られることがあります。

いずれも程度に応じてグレード0(病変なし)からグレードⅣ(重度)までの5段階に分類されます。

2. 脳微小出血

どんな異常?

脳微小出血は、脳の小さな血管が破れて少量の血液が漏れ出した状態です。

MRI検査で微細な黒い点(低信号)として発見されることが多く、特にT2*画像で明確に見えます。

通常は症状がありません

脳微小出血は非常に小さく、通常は自覚症状がありません

ただし、出血部位によっては、将来的な脳卒中や認知症のリスク因子となる場合があります。

主な原因

脳微小出血は主に2つの原因によって引き起こされることが多いです。

脳小血管病

高血圧や糖尿病などが原因で血管が弱くなり、出血が起こりやすくなります。

アミロイドアンギオパチー

特に高齢者に多く、脳血管の壁に異常なタンパク質(アミロイド)が沈着することで、血管がもろくなり出血が生じます。

見つかったらどうする?

今後の脳の健康を保つためにも、生活習慣病がある場合には早めに対処し、適度な運動をするようにしましょう。

3. 無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)

どんな異常?

脳血管疾患を経験したことがない方が、MRI検査を受けた際に画像上で脳梗塞の痕跡が確認されるものの、それに対応する神経症状や身体的な異常が過去にも現在にも認められない状態を指します。

なぜ重要?

研究によれば、無症候性脳梗塞がある方は、ない方と比較して脳卒中を発症するリスクが約3〜4倍になるとされています。

また、認知症を発症する確率も2倍以上高くなるというデータが報告されています。

最大の原因は高血圧

最大のリスク要因は高血圧です。

血圧が高い状態が長期間続くことで、脳の微小血管にダメージが蓄積され、梗塞を引き起こしやすくなります。

そのほかにも、糖尿病、脂質代謝異常症(高コレステロール血症や高中性脂肪血症)、喫煙、過度の飲酒、肥満といった生活習慣病が関連するとされています。

4. 狭窄・閉塞・低形成

どんな異常?

首の頚動脈や脳に血液を送る脳主幹動脈が動脈硬化などの影響で狭くなったり(狭窄)、完全に詰まったり(閉塞)している状態を指します。

また、これらの血管が先天的に細いままで発達が不十分な状態を低形成と呼びます。

なぜ注意が必要?

低形成の場合、動脈自体の直径が小さいため、血流量が制限されやすく、狭窄や閉塞が起こった際には脳血流がさらに悪化するリスクがあります。

症状がないことが多い

この状態は症状が現れないことが多いため「無症候性」と呼ばれますが、将来的に脳卒中やその他の深刻な疾患を引き起こすリスクがあるため、生活習慣を見直し、定期的な検査を通じて血管の健康を維持することが重要です。

5. 脳動脈瘤

どんな異常?

脳動脈瘤とは脳動脈の血管壁が弱くなり、コブ状に膨らんだ状態で、まだ破裂していない動脈瘤のことを指します。

この状態では通常症状は現れませんが、瘤が大きくなったり、形状が不整であったりすると破裂のリスクが高まるため注意が必要です。

破裂すると脳内に出血(くも膜下出血)が起こり、命に関わる重篤な状態に至ることがあります。

どのくらいの人に見つかる?

成人の約2〜5%に存在すると推定されています。

日本では脳ドックなど画像検査の普及により未破裂脳動脈瘤の発見機会が増え、高血圧や喫煙の管理、適切な手術介入が行われるようになった結果、くも膜下出血発症率は減少傾向にあると報告されています。

破裂リスクに関連する主な要因

  • 瘤の大きさ: 一般的に7mm以上の大きさになると破裂リスクが高くなるとされています。
  • 形状: 不整形や瘤に小さな突起(ブレブ)が見られる場合、リスクが増加します。
  • 部位: 内頸動脈後交通動脈分岐部や中大脳動脈分岐部、前交通動脈といった特定の部位の瘤は破裂リスクが高い傾向があります。
  • 年齢・性別: 高齢者や女性に多いことが知られています。
  • 生活習慣: 喫煙、高血圧、過度の飲酒は破裂リスクを高める要因となります。
  • 既往歴: 脳出血やくも膜下出血の既往がある場合、破裂リスクが高くなります。

見つかったらどうする?

小さい(5mm未満)瘤で破裂リスクが低い場合は、定期的に画像検査を行い、瘤の進行を確認します。

大きい瘤(5mm以上)や形状が不整な場合は、破裂のリスクが高いため治療が検討されます。

脳動脈瘤が見つかった場合や疑われる場合は、専門医による評価と治療方針の検討が必要です。

また動脈瘤の出来やすさは遺伝的要因がある場合がありますので、動脈瘤が見つかった際にはご家族も一度MRI検査を受けることをお勧めいたします。

6. 無症候性脳腫瘍および腫瘍様病変

どんな異常?

特に症状を引き起こしていない腫瘍や腫瘍に似た病変のことを指します。

脳ドックで見つかりやすい脳腫瘍

髄膜腫

脳を覆う膜(髄膜)に発生する多くが良性の腫瘍です。

下垂体腺腫

ホルモンを分泌する下垂体に発生する多くが良性の腫瘍です。

見つかったらどうする?

腫瘍の大きさが小さく成長の兆候が見られない場合は、6か月ごとに2回、その後1年に1回の定期的な頭部MRI/MRA検査を受けながら経過観察を行うことがあります。

その他の所見

脳にできる嚢胞(のうほう)

脳内に袋状の構造物が生じ、その内部に液体(脳脊髄液など)がたまった状態を指します。代表的なものには、くも膜嚢胞や脈絡叢嚢胞があります。

多くの場合、脳嚢胞は症状を引き起こすことがなく、経過観察が行われるだけで特別な治療は不要です。

正常変異

脳の構造が通常と異なっているものの、特に健康に害を及ぼす症状や異常を引き起こしていない状態を指します。

これらは主に先天的なものであり、発見されても病気ではないため治療や経過観察の必要はありません。

まとめ

脳ドックで発見できる主な異常について解説しました。

  • 大脳白質病変: 加齢性変化、生活習慣病の管理で進行抑制
  • 脳微小出血: 通常無症状、将来リスク因子の可能性
  • 無症候性脳梗塞: 将来の脳卒中リスクが3〜4倍、高血圧管理が重要
  • 頚部・脳主幹動脈狭窄・閉塞・低形成: 無症状でも将来リスクあり、生活習慣改善が鍵
  • 脳動脈瘤: 成人の約2〜4%に存在、早期発見で管理可能
  • 脳腫瘍: 多くが良性、経過観察で対応可能

重要なのは、「見つかること」より「見つけた後の対応」です。

早期発見によって、適切な生活習慣の改善や治療介入が可能になります。

次回は、人間ドックと脳ドックの違いについて詳しく解説します。

 

【文責】脳ドック認定指導士 / 診療放射線技師

日本脳ドック学会認定指導士として、多くの脳ドック検査に携わってきた経験から、一般の方にもわかりやすく解説します。

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参考文献

  • 日本脳ドック学会「脳ドックのガイドライン2019」
  • 厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」
  • 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021改訂2023」
  • 診療時間

     
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