第1回「脳ドックとは?本当に知ってほしいこと」
この記事で分かること
- 脳ドックの定義と目的
- なぜ日本独自の検査なのか
- 脳ドックで実際に発見される異常
脳ドックとは何か?
脳ドックは、MRI・MRAなどの画像検査を用いて、症状が出る前に脳や脳血管の異常を早期発見することを目指す、日本独自の予防医学的検査(自由診療)です。
人間ドックが脳以外の全身の健康状態を幅広くチェックするのに対し、脳ドックは脳と脳血管に特化して、より詳細な評価を行います。
なぜ脳ドックが必要なのか?
脳血管疾患と認知症の深刻な現状
厚生労働省の「令和2年人口動態統計」によると、日本人の死因の第4位は脳血管疾患で、2020年には約10万3千人が亡くなっています。
さらに、2022年の「国民生活基礎調査」では、介護が必要になる原因の第1位は認知症(約16〜18%)、第2位は脳血管疾患(脳卒中)(約15〜16%)となっており、この2つで要介護原因の3分の1を占めています。
| 脳血管疾患のリスク | データ |
|---|---|
| 年間死亡者数 | 約10万3千人 |
| 死因順位 | 第4位 |
| 要介護原因 | 第2位(約15〜16%) |
| 後遺症 | 運動麻痺、言語障害、認知機能低下など |
脳ドックは認知症予防にも役立ちます
実は、脳ドックは認知症リスクの早期評価にも有効です。
脳萎縮の程度や脳血管の状態を評価することで、認知症の発症リスクを把握できる可能性があります。
特に、無症候性脳梗塞や白質病変は将来の認知症の危険因子の一つとされており、早期発見によって生活習慣の改善など適切な予防策を講じることができます。
「症状が出る前」が重要な理由
脳の病気の怖いところは、重大な症状が突然現れることです。
くも膜下出血は何の前触れもなく激しい頭痛に襲われ、脳梗塞では突然手足が動かなくなり、脳腫瘍は気づいたときには進行していることも少なくありません。
認知症も、気づいたときにはすでに進行していることが多くあります。
これらの多くは、脳ドックで事前に兆候を発見できる可能性があります。
脳ドックで発見できる主な異常
1. 未破裂脳動脈瘤
脳の血管にできた「コブ」のような膨らみです。
破裂するとくも膜下出血を引き起こします。成人の約2〜5%に存在すると推定されており、小さいうちに発見できれば、経過観察や予防的治療が可能です。
定期的な画像検査で大きさの変化を追跡できます。
日本では脳ドックなど画像検査の普及により未破裂脳動脈瘤の発見機会が増え、高血圧や喫煙の管理、適切な手術介入が行われるようになった結果、くも膜下出血の予防に貢献していると考えられています。
2. 無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)
本人が気づかないうちにできている、小さな脳梗塞の痕です。
中高年の一定割合に見られると報告されており、将来の脳卒中の危険因子の一つとされています。
最大の危険因子は高血圧であることから、血圧管理など生活習慣の見直しで進行を防げる可能性があります。
3. 脳萎縮と白質病変(認知症リスク評価)
脳萎縮の程度を評価することで、年齢相応かどうかを判断し、認知症リスクの早期評価が可能です。
また、白質病変は細い血管の障害を示す所見で、加齢や高血圧で増加し、認知機能低下との関連が指摘されています。
4. 脳腫瘍・頚動脈狭窄
その他、脳腫瘍の早期発見や、脳梗塞の原因となる頚動脈狭窄なども評価できます。
脳ドックにも限界があります
脳ドックは有用な検査ですが、すべての脳の病気を100%発見できるわけではありません。
検査時点では捉えきれない、ごく初期の変化や、急速に進行する疾患もあります。
そのため、定期的な検査と合わせて、日々の血圧管理などの生活習慣の維持が、将来の疾患リスクを軽減するために重要です。
なぜ日本独自の検査なのか?
実は、「脳ドック」という形式の検査は日本で発展した独自のものです。
日本では高齢化とともに依然として脳卒中の有病率が高いと報告されており、高血圧や食塩摂取量などの生活習慣との関連が指摘されています。
また、日本は世界有数のMRI保有台数を誇り、頭部MRIの普及と未破裂脳動脈瘤問題を背景に、症状の出ない段階で脳血管病変を見つける仕組みとして脳ドックが発展してきました。
こんな方に脳ドックをおすすめします
特に受診を推奨したい方
脳ドックは特に40歳以上の方に推奨されます。脳血管疾患のリスクが高まる年代だからです。
また、高血圧・糖尿病・脂質異常症のある方は血管へのダメージが蓄積しやすく、家族に脳卒中やくも膜下出血、認知症を起こした方がいる場合は遺伝的リスクも考慮する必要があります。
喫煙習慣のある方や、脳の不調が気になる方も、原因精査のために受診を検討されることをおすすめします。
若い世代(20〜30代)にも意義があります
2021年にスマートスキャン株式会社が実施した「脳ドックの認知・イメージ調査」によると、20〜30代の約65%が脳ドックを「知らなかった」と回答しています。
若いうちに受診すると、正常な脳の状態を記録できるため将来の比較基準になります。また、早期発見で治療選択肢が広がる可能性があり、健康意識を高めるきっかけにもなります。
まとめ
脳ドックは、症状が出る前に脳と脳血管の健康状態を知るための大切な検査です。
脳卒中や脳腫瘍などの早期発見に役立つと考えられており、日本人の死因・要介護原因の上位を占める脳血管疾患と認知症の予防に貢献できる可能性があります。
「異常なし」でも安心、「所見あり」でも適切な対応が可能です。
ただし、すべてを発見できるわけではないことも理解が必要です。人間ドックとは別に、脳に特化した検査の意義があります。
「知る」ことが予防の第一歩です。
【文責】脳ドック認定指導士 / 診療放射線技師
日本脳ドック学会認定指導士として、多くの脳ドック検査に携わってきた経験から、一般の方にもわかりやすく解説します。
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参考文献
- 日本脳ドック学会「脳ドックについて」
- 厚生労働省「令和2年人口動態統計」「令和4年国民生活基礎調査」
- 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021」
- スマートスキャン「脳ドックの認知・イメージ調査」
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