新たな認知症薬『レケンビ』『ケサンラ』とは?
アルツハイマー型認知症とアミロイドβの関係
アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβ(ベータ)という物質が脳に蓄積することだと考えられています。
最近このアミロイドβ(ベータ)を取り除く新しいアルツハイマー型認知症のお薬が使用できるようになったことを皆様はご存じでしょうか?
新しい認知症治療薬『レケンビ』と『ケサンラ』
現在2種類のお薬があり、エーザイ株式会社より発売された『レケンビ』とイーライリリー株式会社から発売された『ケサンラ』というお薬です。
認知症にはさまざまな原因がありますが、このお薬はアルツハイマー型認知症にのみ使用でき、さらに軽度認知障害(MCI)や軽度認知症の段階にある比較的軽症の方に限られます。それでも、これまでの認知症治療において大きな前進をもたらす画期的な治療法です。
先日、これらの新しい認知治療薬について2日間かけて勉強してきました。
日本の認知症領域におけるオピニオンリーダーの先生方のご講演を拝聴し、質問もできた、大変貴重な機会でした。
治療方法とその効果について
軽度認知障害(MCI)と診断された場合、2週間もしくは4週間ごとに注射を行います。
発表されている治験のデータでは「注射薬を使わなかった時と比べて認知機能の低下を約6か月遅らせることができる」と報告されています。
たった6か月か...と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、エキスパートの先生のお話の中では進行を抑制する効果は投与後時間が経つとより顕著になっていく可能性があるとのことでした。
これらのお薬を投与することによる副作用は脳出血と脳浮腫、つまり脳のむくみです。
一定の割合でお薬を投与する際にはこれらの副作用の出現に注意しながら行っていきます。
頭痛や認知機能の急な変化、手足のまひや痺れ、言葉の出づらさなどが出た場合にはなるべく早期に頭のMRI検査を行い、これらの副作用が出ていないかを確かめます。
当院での対応と治療の流れ
現時点で当院では国の決まりでこの注射薬を新しく導入することはまだできないのですが、投与開始から半年以上経過した患者さまへの継続投与はできるように体制を整えました。実際、年が明けてから既に数名の患者さまの治療を当院でも開始しております。
また当院ではこの治療が受けられるかどうかを判断するための入り口となる検査(スクリーニング検査)を当院で行うことができます。
具体的にはMMSE(Mini Mental Status Examination)という認知機能検査、頭のMRIあるいはCT検査、そして血液検査を行い認知機能低下の評価を行います。
条件を満たす場合は、アミロイドPETや髄液検査といった更なる精密検査が可能な病院へ紹介し、治療の適応があるかを判断していただきます。練馬区周辺では現時点で[順天堂練馬病院]や[総合東京病院]、そして[東京健康長寿医療センター]などで対応可能です。
家族診察の実施
認知症の前段階である軽度認知障害や軽度認知症の段階では、ご自身の認知機能が低下しているという自覚に欠けることが多く(病識の欠如)、ご家族や周りの方が心配されているにもかかわらず受診を拒むケースがあります。
そのような時にご家族のみでいらして頂き認知症ケア専門士の資格を持つ当院の看護師と認知症サポート医である私とお困りのことやどのようにして受診につなげるか、生活環境をどのように整えていくかなどをご相談頂ければと思います。
認知症予防のためのドックのご案内
また当院では認知症に特化したドックもご用意しております。
MRI検査や血液検査、認知機能検査に加え、Mvisionという検査を実施しています。Mvisionは脳の萎縮度を解析し、現在の認知機能低下の程度や将来的なリスクをある程度予測するものです。
現時点では症状などはないが今後認知症になることが心配な方などはどうぞご活用ください。
まとめ 〜認知症治療の新たな時代へ
レケンビやケサンラの登場により認知症治療は新しい段階に入ったと言えます。必要な患者さまに、必要なタイミングで、安全に提供できるようにするのが我々の役割だと考えていますので、これからも勉強を続けてまいります。
(院長 井上 剛)
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