【第1回】放射線はこわい?―正しく知って安心するための基礎知識―
CT検査は、体の中を詳しく調べるために「放射線」を使う検査です。
みなさんは「放射線」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?「なんだか怖い」「体に悪そう」と感じる方も多いかもしれません。
けれども、医療の現場で使われる放射線は、正しく管理されていればとても頼もしい『道具』なのです。今回は、そんな放射線の基礎について、できるだけやさしく解説していきます。
放射線とは
放射線とは、エネルギーを持って空間を飛び回る「粒子」や「波」のことです。
実は放射線は特別なものではなく、私たちの周りにも自然界に存在しています。
🌍 身近な放射線の例
大地や空気
地球の岩や土にはウランやトリウムといった「放射性物質」が含まれ、そこから放射線が出ています。空気中にも「ラドン」という放射性物質が含まれています。
宇宙からの放射線
宇宙には「宇宙線」と呼ばれる放射線が飛び交っています。飛行機に乗ると地上より高い場所を飛ぶため、地上より少し多く宇宙線を浴びることになります。
つまり、放射線は私たちの生活の中に自然に存在しているものなのです。
放射能とは
ニュースなどでよく耳にする「放射線」と「放射能」。似た言葉ですが、実は意味が違います。
では具体的に「放射線」と「放射能」は何が違うのでしょうか。
放射線と放射能の違い
これらの違いはよく懐中電灯に例えられます。懐中電灯の光を「放射線」とすると、懐中電灯本体は放射線を発する「放射性物質」となります。そしてこの懐中電灯の光を出すという機能(能力)が「放射能」になります。
懐中電灯 ➡ 放射性物質
懐中電灯の光 ➡ 放射線
光を発する能力 ➡ 放射能
つまり、「放射能を浴びる」という使い方は誤りで、正しくは「放射線を浴びる」といいます。
放射線の種類
放射線には大きく分けて「電磁波」と「粒子線」の2つの種類があります。
電磁波タイプ
波の形で伝わる放射線で、私たちが見ている光(可視光)や紫外線、赤外線、電子レンジで用いるマイクロ波も電磁波の仲間です。
医療でよく使われるのは「X線(エックス線)」や「γ線(ガンマ線)」です。
粒子線タイプ
粒として空間を飛び回る放射線で、質量を持っています。
代表的なものに「α線(アルファ線)」、「β線(ベータ線)」、「中性子線」があります。また、医療では放射線治療で用いられる「陽子線」、「重粒子線」も粒子線になります。
CT検査で使われる放射線
CT検査は、放射線を使用して体の断面(輪切り)を画像にして見る検査です。 CTで使われる放射線は「X線」です。
「X線」は1895年にドイツの物理学者レントゲンによって発見されました。当時は正体不明の線(未知の線)ということで、数学用語で未知数を表す「X」を用いて「X線」と名付けられました。
X線は物質を通り抜ける性質があり、骨や筋肉、臓器などによって、通りやすさが異なります。体の中の組織によってX線の通り方が違うので、その違いをコンピュータで計算して、体の断面画像を作り出します。
身体の中を痛みなく、短時間で検査できるのはX線のおかげです。
X線の発生方法
続いて、CT装置の中でどのようにX線が作られているのかを、できるだけ簡単に説明していきたいと思います。
少し専門的な内容になりますが、「なんとなくそんな仕組みなんだな」と感じてもらえれば大丈夫です。
CT装置の中には「X線管」という部品があります。X線管の中には
・陰極:電子を出す側
・陽極:電子を受ける側
の2つがあります。陰極にはフィラメントという細い金属があり、ここに電流を流して加熱すると電子が放出します。放出された電子は高電圧で加速され陽極に向かって加速していきます。
陽極にはタングステンという金属が使われています。この加速された電子がタングステンに衝突するとX線が発生します。
➀陰極でフィラメントを加熱し、電子を放出させる。
②電子を高電圧で加速させる
③陽極に衝突するとX線が発生。
実は電子のうちX線になるのは約1%。残りの99%は熱になるんです。
CT装置ではこのX線管が高速で回転しながら、体の360度方向からX線を照射することで、鮮明な断面画像を得ることができます。
放射線を扱える職業
放射線は医療において有用な反面、人体に対して影響を及ぼす力を持つため、正しい知識と厳密な管理のもとで使用することが不可欠です。そのため、放射線を扱うことができるのは
・医師
・歯科医師
・放射線技師
という国家資格を持つ限られた職種のみと法律で定められています。
まとめ
今回は放射線の基礎知識について簡単に解説しました。放射線は目に見えないためどこか怖い印象を持たれがちですが、正しく理解すればその有用性がわかります。
医療で用いる放射線は、病気の早期発見や治療方針の決定など、私たちの健康を守るために欠かせない大切な存在です。
しかし、放射線を扱うことができるのは、国家資格を持つ限られた職業のみであり、その力を安全に活かすには、専門家による厳密な管理が欠かせません。次回のコラムではこのような安全性の面や放射線被ばくついて解説したいと思います。
著:診療放射線技師.Y
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