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高尿酸血症

〜痛風だけではありません。脳卒中・認知症とも深い関係が〜

高尿酸血症は脳の健康にも影響します

高尿酸血症は、単なる痛風の原因というだけではなく、脳梗塞や認知症といった「脳の病気」とも関係することが近年の研究で明らかになってきました。

ねりま脳神経外科では、脳卒中や認知症の予防の一環として、尿酸値の管理にも力を入れています。

特に、高血圧・糖尿病・脂質異常症など他の生活習慣病と併存する方には、より早期の対応が重要です。

尿酸値が高めの方は、脳のリスク評価を兼ねて一度ご相談ください。

 

高尿酸血症と痛風

高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態をいいます。

尿酸は、プリン体の代謝によって生成され、通常は腎臓から排泄されますが、生成量の増加排泄機能の低下により体内に蓄積すると、尿酸塩として結晶化し、関節や腎臓に沈着して痛風や腎障害を引き起こす可能性があります。

また、最近のエビデンスKanbay et al., 2017, Lancet)では、尿酸値を適切にコントロールすることで、心血管リスク腎機能の悪化が抑制される可能性が示されています。

 

疫学

  • 日本では、食生活の欧米化や運動不足などの生活習慣の変化により、患者数が増加しています。​
  • 高尿酸血症は日本人成人男性の約20%、特に肥満者、飲酒習慣者、高血圧・糖尿病患者に多くみられます。
  • 女性は閉経後に増加傾向
  • 痛風の有病率は日本全国で 1~2% 程度。40代以降の男性に多く、再発しやすい特徴があります。

 

症状

高尿酸血症は無症状のことが多いですが、尿酸塩が関節に沈着すると、以下のような症状が現れる場合もあります:

  • 痛風発作:突然の関節の激しい痛み、腫れ、発赤(特に足の親指の付け根に多い)​
  • 尿路結石:尿酸結石による腰痛や血尿
  • 腎障害:腎機能の慢性的な低下

 

診断

血液検査で血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、高尿酸血症と診断されます。

​また、痛風の診断には、関節液の検査で尿酸塩結晶の有無を確認することがあります。

 

治療方針

高尿酸血症の治療の基本は、生活習慣の見直しです。​以下の点に注意することで、尿酸値のコントロールが期待できます。

生活習慣の改善

■ 食事指導
  • プリン体の多い食品(内臓、干物、ビールなど)は制限(目安:1日400mg以下)
  • 果糖(清涼飲料水)や砂糖入り飲料は避ける
    [果糖の過剰摂取(清涼飲料、加工食品)が 尿酸の生成を促進 する]
  • 野菜・乳製品は推奨(プリン体が少なく尿酸を下げる)

 

■ 体重管理
  • BMI 25.0以下が目標
  • 肥満は尿酸値を上昇させ、痛風発作を悪化させる
  • 5%以上の減量で尿酸値が有意に低下することが証明されています(Matsuura et al., 2014)

 

■ 水分摂取
  • 尿量2000mL/日を目標に十分な水分補給を行う
  • 尿路結石の予防にもつながる

 

アルコール制限
  • 特にビール、日本酒はリスクが高い(プリン体多)
  • 禁酒または節酒が必要

 

■ 運動
  • 適度な有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)
  • 週150分以上が推奨 *ただし無理のない範囲で行う​

 

治療開始の目安

生活習慣の改善だけでは尿酸値が下がらない場合や、痛風発作を繰り返す場合には、物療法が行われます。

分類 尿酸値 治療方針
無症候性 7.0mg/dL以上 原則生活指導。8.0mg/dL以上または合併症ありで薬物治療検討
痛風既往あり 不問 すぐに薬物治療を開始

 

薬物療法

​主な薬剤には、尿酸の生成を抑える薬や、尿酸の排泄を促進する薬があります。

薬の種類 代表薬
尿酸生成抑制薬
[尿酸の生成を減らす薬。第一選択薬]
ザイロリック®、フェブリク®、トピロリック®
尿酸排泄促進薬
[尿中への尿酸排泄を促す薬]
ユリノーム®、ウリアデック®

※治療薬の選択は腎機能副作用を考慮し、個別に判断されます。

 

発作時の治療

急性痛風発作時は以下の薬剤で炎症・痛みを抑えます

  • NSAIDs(インドメタシンなど):第1選択。インドメタシンなど。胃腸障害に注意
  • コルヒチン(初期に有効):発作初期に有効。予防的にも使用される
  • ステロイド(内服や関節内注射):内服・関節内注射。腎機能低下例やNSAIDs禁忌例に

※発作中に尿酸値を急に下げないことが重要です。

 

目標尿酸値とモニタリング

状態 目標尿酸値
痛風発作・結節あり < 6.0mg/dL
痛風結節なし < 6.0〜6.5mg/dL
無症候性(高リスク) 6.0〜7.0mg/dL未満(合併症考慮)
  • 血清尿酸値:1〜2か月ごとに確認
  • 腎機能(eGFR)、尿酸排泄量、尿pHなども定期的にチェック
  • 治療薬による副作用(肝障害、皮疹、過敏症)にも注意

 

予防のための生活習慣

高尿酸血症を予防するためには、日常生活の中で以下の点に注意することが大切です。​

  • バランスの良い食事、果糖やプリン体の制限
  • 水分補給の習慣化(1日2L以上)
  • 肥満予防と代謝改善を目的とした運動
  • 節酒・禁酒
  • 十分な睡眠とストレス管理

これらの生活習慣の改善は、高尿酸血症だけでなく、他の生活習慣病の予防にもつながります。​

高尿酸血症は、生活習慣の見直しによって予防・改善が可能な疾患です。​気になる症状がある方は、早めに医療機関を受診し、適切な指導を受けることをおすすめします。​

 

当院の取り組み

高尿酸血症は、痛風や腎障害だけでなく、脳卒中や心筋梗塞など重大な病気のリスク因子としても注目されています。当院では以下のような対応を行っています。

  • 生活指導と早期介入
  • 定期的な血液検査での尿酸・腎機能のチェック
  • 痛風発作時の迅速な対応と再発予防
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症との包括的管理

 

参考:プリン体含有量の目安

プリン体を多く含むもの(100gあたり)

🟥 【プリン体が非常に多い食品:300mg以上】

食品名 含有量(mg) 備考
煮干し 約746 圧倒的に高いため要注意
かつお節 約493 出汁の摂取量によっては問題に
あんこうの肝 約399 非常に高い
干物(いわし) 約305 水分が抜けて高濃度に
鶏レバー 約312 代表的な高プリン食品

🟧 【プリン体が多い食品:200~300mg】

食品名 含有量(mg) 備考
豚レバー 約285 同様に要注意
牛レバー 約219 鶏・豚よりは少ないが高め
白子(たら) 約210 酒肴で注意が必要
鰹(生) 約210 頻度・量に注意
いわし(生) 約210 週数回に控えるのが無難

🟨 【プリン体がやや多い食品:100~200mg】

食品名 含有量(mg) 備考
あじ(生) 約150 頻度を考慮
えび 約150 食べ過ぎに注意
さんま 約120 焼き魚など定番でも注意を
さば 約120 健康食でもプリン体は中程度
まいわし 約120 加熱調理でやや減少

✅ プリン体が少ない食品(目安:50mg以下)

食品グループ 具体例
野菜全般 トマト、きゅうり、キャベツ、白菜など
乳製品 牛乳、ヨーグルト、チーズ
鶏卵・うずら卵など
穀類 白米、パン、うどんなど
果物 りんご、みかん、バナナ、ぶどうなど

🍺 飲料・嗜好品とプリン体

飲料 プリン体含有量(目安)
ビール 約3~7mg/100mL(高め)
発泡酒 約3~6mg/100mL
焼酎・ウイスキーなど蒸留酒 ほぼ0mg
プリン体ゼロビール 表示通りほぼゼロ
(※ただしアルコールによる尿酸値上昇はある)

※野菜や乳製品は、尿酸値を下げる効果もあるとされ、積極的な摂取が推奨されます。

 

文責:ねりま脳神経外科 院長 井上剛(日本脳神経外科学会専門医、日本頭痛学会専門医)

  • 診療時間

     
    10:00~13:30
    受付は13:15まで
    15:00〜19:00
    受付は18:45まで

    休診日:木・日・祝・第3水曜午後(院内研修のため)
    ○9:00~13:00 受付は12:45まで

 

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