頭部打撲
頭をぶつけてしまった時、特に小さなお子様の場合は「病院に行くべきか」「様子を見て大丈夫か」と不安になることがあると思います。
このページでは、頭部打撲後に注意すべき症状や、受診の目安についてご説明します。
頭部打撲時に注意すべき点
歩き始めの小さいお子様は相対的に頭が重たいこともあり、よく頭をぶつけてしまいます。小さなお子様に限りませんが、頭をぶつけてしまった時には以下の点に注意してください。
- どのように、どれぐらいの強さで頭をぶつけたか
- 意識を失っている時間がなかったか(すぐに泣いたか)
- けいれんなどはなかったか
- 気持ち悪さや嘔吐がないか
- 大きなたんこぶができていないか
- 打撲後の受け答えや反応など普段と違うことがないか
1. 受傷状況の確認
どれぐらいの強さで頭をぶつけたかは、頭の中で出血や頭蓋骨の骨折、そして脳に傷がつく(脳損傷)を予測するうえで大切な情報です。
交通事故や高所からの転落(2歳未満の場合は90cm以上、2歳以上の場合は150cm以上からの転落)など、自分の持つ以上の力が加わった場合には注意が必要です。
公園遊具やスポーツで遠心力がかかった状態や、不意打ちで身構えることができなかった状態での頭部打撲も同様です。
外見上の腫れが小さくても、高速での衝突やスポーツ中の強い衝撃では、見た目に変化がなくても脳が揺さぶられることがあります。
このような状況での受傷は、症状がなくても医師の診察を受けることをおすすめします。
2. 意識状態の確認
頭をぶつけた際に意識がなくなったり、おかしな言動がないかという点も、頭の中で何か起こっているかどうかを判断する上で大切なポイントです。
小さなお子様の場合には、すぐに泣いたかどうか、アイコンタクトができて表情やしぐさが普段通りかどうかという点で判断します。
意識を失っている、もしくは朦朧(もうろう)としている時間帯があったり、普段の様子をご存じの保護者の方からみて普段と様子が違うところがある場合には受診されることをおすすめします。
また、頭部打撲後に意識消失がなかったとしても、辻褄の合わないことを言ったり、同じことを何度も繰り返し聞く、不安感が強くなり落ち着きがなくなるなどといった症状が見られることがあります。
このような意識状態の変化が見られた場合には受診するようにしましょう。
3. けいれんの有無
頭部打撲後にけいれんがあった場合も、頭の中で異常が起こっている可能性を疑う症状の一つです。
年齢を問わず、嘔吐に加えてけいれんなどが見られた際には救急車で病院に行くことも考慮してください。
お子様の場合には、頭の中で何もなくても強く脳が揺れることでけいれんしてしまうことがあります。
頭部打撲直後に一度けいれんがあったとしても、その直後にすぐ泣いたり、普段の様子に戻ったりした場合は、必ずしも悪い兆候とは限りません。
ただし、けいれんが繰り返されたり、その後も意識がもうろうとしたままの場合は、速やかに受診をおすすめします。
4. 吐き気や嘔吐
気持ち悪さの訴えや嘔吐は、頭の中での出血などによって頭の中の圧が上がった時に出てくる症状の一つです。
乳幼児の場合には母乳やミルクの飲みが悪くなることもサインの一つですのでその際には受診をおすすめします。
また、小さなお子様の場合には頭の中で何も起こっていなくても、頭部打撲後に嘔吐しやすくなってしまうことがあります(ケトン代謝周期性嘔吐症)。
診察にて問題ないことを確認する必要がありますが、受診後も吐き気や嘔吐が続く場合には、スポーツドリンクや白湯などを少量ずつ摂取することをおすすめします。
この時柑橘系のジュースなどを摂取すると吐き気がより強くなってしまうことがあるため、気分が悪くなったら避けてください。
5. たんこぶ(皮下血腫)
頭をぶつけた時にできる“たんこぶ”はぶつけた場所が膨らんでくる状態を指す言葉で、医学的には皮下出血と皮下腫脹、頭血腫などが含まれています。
皮下出血とは皮膚の下で出血することで、しばらくすると皮膚が青紫色に変わってきます。
皮下腫脹とは皮膚が腫れてしまうことで多くの場合は皮下出血を同時に伴います。
頭血腫とは主に新生児や乳児の頭蓋骨が折れてしまった際、頭の骨とそれを包む骨膜の間に血が溜まっていく状態です。多くの場合、数週間から数ヶ月で自然に吸収されます。
いずれにしても大きなたんこぶが出来ている時は、外力が強かったことを意味するため受診することをお勧めします。
またたんこぶが小さい、もしくはなかったとしても、遠心力が加わって強く脳が揺れた場合などには頭の中で出血する場合もあります。
必ずしも「たんこぶがないから大丈夫」という訳ではありませんので、受傷した状況やその後の症状次第では受診をご検討ください。
どれぐらい様子を見たら良いのか
多くの場合、受傷後数時間以内に症状が現れます。
特に、血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を飲んでいる場合は、初回のCT検査で異常がなくても遅発性の出血が起こる可能性があるため、12〜24時間の観察が推奨されます。
また、小さなお子様やご高齢の方の場合には、訴えが正確でない場合がありますので、念のため24時間は変わりないかどうか様子を見ていただくと確実です。
受傷後数日から1週間程度は、症状の変化に注意を払ってください。
観察中に以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 意識レベルの低下
- 激しい頭痛や頭痛の悪化
- 繰り返す嘔吐
- けいれん
- 手足の動かしにくさやしびれ
- 普段と違う様子や言動
お子様のCT検査について
小児の頭部打撲時、すべてにCT検査が必要なわけではありません。国際的な研究(PECARN研究:18歳以下の小児42,000例を対象)では、CT検査が不要なケースの指標が示されています。
2歳未満の小児でCT検査が不要と考えられる場合
以下のすべてに該当する場合:
- 精神状態が正常
- 前頭部以外の頭皮に血腫(腫脹)がない
- 意識消失はないかあっても5秒未満
- 傷害の機序が重度でない
- 触診で頭蓋骨骨折を触知しない
- 保護者が子の行動は正常と見ている
2歳以上の小児でCT検査が不要と考えられる場合
- 精神状態が正常
- 意識消失がない
- 嘔吐がない
- 損傷の機序が重度ではない
- 頭蓋底骨折の徴候はない
- 重度の頭痛がない
言い換えると、上の項目が一つでも該当する場合にはCT検査を検討する必要があります。
CT検査は放射線を使用する検査ですが、医学的に必要と判断された場合は、頭蓋内出血などの重大な異常を見逃すリスクを避けるため検査を受けることをおすすめします。当院では必要最小限の線量で検査を行っています。
CTは放射線を使用する検査ですので被ばくの問題も心配されることと思います。で被ばくについても解説していますのでそちらも参照ください。
どのような医療行為もそうですが、CT検査をするメリットが被ばくによるデメリットを上回る場合、つまり医学的に必要な時には躊躇せず検査することをおすすめします。
当院での診察の流れ
受診された際は、まず受傷状況、症状、既往歴などを詳しくお伺いします。
その後、神経学的診察を行い、意識状態、瞳孔、手足の動きなどを確認します。
必要に応じて頭部CT検査、頭部レントゲン、頭部MRI検査を行い、検査結果をもとに今後の注意点や治療方針をご説明します。
よくあるご質問
すぐに泣いたので大丈夫でしょうか?
すぐに泣いたことは意識消失がなかったことを示す良い兆候ですが、それだけで安全とは言えません。その後24時間程度は注意深く観察してください。
たんこぶは冷やした方がいいですか?
打撲直後から冷やすことで、腫れや痛みを軽減できることがあります。ただし、大きなたんこぶができている場合は受診をおすすめします。
打撲後、時間が経ってから症状が出ることはありますか?
はい、あります。特に高齢の方では、打撲から数日から数週間後に慢性硬膜下血腫という状態になることがあります。数週間以内に頭痛、歩行がおぼつかない、最近物忘れが増えたなどの症状が出た場合は、念のため医師にご相談ください。
関連ページ
- [頭部外傷について]
- [頭や顔のキズについて]
- [脳震盪について]
文責:井上剛(日本脳神経外科学会 日本脳神経外科学会専門医)
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