頭や顔の傷
お子様やご家族が頭や顔をケガした時、出血が多くて驚いたことはありませんか?
頭や顔は血管が豊富なため、小さな傷でも出血が多く見えます。
しかし外見だけでは判断できない重要なケースもあります。
この記事では、頭や顔のケガの種類、応急処置、病院を受診すべきタイミングについて、脳神経外科専門医がわかりやすく解説します。
頭や顔のケガ、どんな種類がある?
頭や顔のケガにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や治療法が異なります。
見た目の大きさだけでは重症度を判断できないのが特徴で、特に頭や顔は血管が多く、少しの傷でも出血が多く見える一方で、脳や神経の損傷が隠れている場合もあります。
1. 擦過傷(さっかしょう/擦り傷)
転倒や自転車での転倒でよく起こるケガです。皮膚の表面がこすれて削れた傷で、滲むような出血がありますが深くありません。
砂や泥などの異物が入り込みやすく、感染に注意が必要です。
適切に洗浄し、湿潤療法(モイストヒーリング)で治療します。
2. 切創(せっそう/切り傷)
ガラスや刃物など鋭いもので皮膚がスパッと切れた傷です。
形が整っており、出血が比較的多いのが特徴です。
深い場合は縫合が必要で、神経や血管の損傷がないか確認することが大切です。
3. 裂創(れっそう/裂け傷)
鈍い衝撃で皮膚や皮下組織が裂けるように切れた傷です。
不整形で汚染されやすく、頭部では転倒や打撲で生じることが多いタイプです。
出血が多い場合があり、縫合と抗生剤投与が必要なこともあります。
4.挫創(ざそう/押し潰されたような傷)
強い圧力で皮膚や皮下組織が損傷した状態です。
組織が壊死(壊れて死ぬ)しやすく、感染や瘢痕(はんこん・傷跡)になりやすいのが特徴です。
顔や頭では交通事故や転落時にみられます。
5. 打撲・皮下血腫
外見上は皮膚が破れていませんが、内側で出血や腫れを起こしている状態です。
顔面や頭部の皮下出血(青あざ)や腫れとして現れます。
痛みや腫脹が強い場合、骨折を伴っていることもあるため注意が必要です。
6. 刺創(しそう/刺し傷)
釘、ペン、枝などの鋭利なものが皮膚に刺さった傷です。
一見小さくても、深部に感染や出血が起きていることがあります。
異物が残るリスクもあるため、医療機関での評価が重要です。
ケガをした直後、どうすればいい?
ステップ1: 出血の確認と止血
最初に行うべきは止血です。清潔なガーゼやタオルで強く圧迫して止血します。
血が止まりにくい場合でも、こすらず圧迫を続けることが大切です。
傷の奥が深い、ぱっくり開いている場合は縫合が必要なことがあります。
ステップ2: 洗浄
軽い擦り傷や浅い切り傷なら、水道水で汚れをやさしく洗い流します。
砂や異物が入っている場合は、無理に取らず医療機関へ受診してください。
ステップ3: 冷やす
腫れや痛みがある場合は、清潔なタオルで包んだ保冷剤などで10〜15分程度冷却します。
ステップ4: 観察
傷だけでなく、全身の様子も観察することが重要です。以下のような症状があれば、脳の損傷を疑って早めに受診してください。
- 頭痛が強くなる
- 吐き気、嘔吐を繰り返す
- ぼーっとする、意識がはっきりしない
- 手足の動きに違和感がある
どんな時に縫う必要がある?
傷を縫うかどうかの判断は、傷の深さ、開き具合、場所、そして受傷からの時間によって決まります。
縫合が必要な6つの基準
① 傷口が「ぱっくり開いている」場合
皮膚の断端が開いていて、自然に閉じないものは縫合が必要です。
目安としては5mm以上開いている、もしくは真皮(皮膚の奥の白い層)が見える場合です。
顔や頭皮では整容面(あとを残さない)も考慮して、浅くても縫うことがあります。
② 出血が止まらない場合
10〜20分間圧迫しても出血が止まらない場合、太い血管が切れている可能性があります。頭皮は血流が豊富なため出血が多く、縫合で止血することがあります。
③ 深さがある(脂肪や筋肉、骨が見える)場合
傷の奥に黄色い脂肪組織や赤い筋肉が見える場合は、自然治癒が難しいため縫合が必要です。そのままにすると感染や瘢痕(あとが残る)のリスクが高まります。
④ 顔・頭・手など、整容や機能に関わる部位
顔やまぶた、口唇などは目立ちやすく動きやすいため、きれいに治す目的で早期縫合します。この場合はより細い糸で縫う必要があるため形成外科にご紹介する場合があります。
頭皮も髪で隠れるとはいえ、裂創は開きやすく、放置すると化膿や脱毛の原因になります。
⑤ 異物・汚染を伴う場合
ガラス片や砂利が入っているときは、まず十分に洗浄・除去し、その後必要に応じて縫合をします。
汚染が強い場合は、あえて縫わず、ひとまず開放創として、後日形成外科にて縫合することもあります。
⑥ 感染のリスクが低く、受傷から時間が経っていない場合
一般に受傷後6〜8時間以内(顔面では12時間以内)なら、感染リスクが低く縫合可能です。
時間が経過した傷では、感染を防ぐために洗浄+一時的な開放処置を行い、後日縫う(二期縫合)こともあります。
逆に「縫わないほうがよい」場合
- 傷が浅く、自然に閉じる
- 軽い擦過傷など、湿潤療法で十分治癒が見込める
- すでに感染している(膿がある、赤く腫れている)
- 受傷から長時間経過しており汚染が強い
感染がある場合や汚染が強い場合は、形成外科での専門的な処置が必要になります。
縫合処置
当院では以下のような方に対して縫合処置を行っています。
対応している主なケース:
- 頭部・顔面の裂創で出血が続く
- 傷口が開いていて皮下組織が見える
- 顔などで整容的に跡を残したくない
- 受傷直後で感染がない
縫合方法の使い分け
頭皮で傷が綺麗な場合にはステープラーと呼ばれるホチキスのようなもので縫合します。
顔や傷がいびつな場合には4-0ナイロン糸で縫合します。
傷が小さく1、2針縫う場合には局所麻酔はせずに縫合を行います。
これは局所麻酔をする際に最低4、5回針を刺さなければならず、縫うことの痛みよりも局所麻酔をすることによる痛みの方が大きいためです。
処置後は、必要があれば抗生剤の外用・内服をして頂き、抜糸(5〜7日後)を行い、きれいに治るようフォローします。
こんな時は必ず病院へ
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
傷について
- 出血が20分以上止まらない
- 傷が5mm以上開いている
- 砂やガラスなどの異物が残っている
- 顔の傷で整容面が気になる
症状について
- 頭を強く打った・意識を失った
- 吐き気・めまい・頭痛が続く
- 意識がもうろうとする
- 嘔吐を繰り返す
- 頭痛が強くなっていく
- 目の焦点が合わない
- 手足のしびれや力が入らない
外見上は軽く見えても、頭蓋内出血や脳震盪が起きていることがあります。このような症状がある場合は、CTやMRI検査が必要です。
自宅でのケア方法と注意点
傷口を清潔に保ち、かさぶたを無理に剥がさないようにしましょう。
シャワーは当日から可能です。石けんなども使用して問題はありませんが直接こすらず、使用後はよく流水で流すようにしましょう。
縫合後は医師の指示で抜糸(通常5〜10日)を行います。抜糸のタイミングは傷の場所や状態によって異なるため、必ず指定された日に受診してください。
感染のサインに注意
以下のような症状が出たら感染のサインです。早めに再診してください。
- 腫れ・赤みが強くなる
- 膿が出る
- 発熱がある
- 痛みが増している
頭部打撲後は、2〜3日間は安静にし、症状の変化を観察しましょう。
特に受傷後24時間以内は注意深く様子を見る必要があります。
当院での対応
ねりま脳神経外科では、頭や顔の外傷に対して以下の対応を行っております。
- 創傷処置・縫合・抜糸
- CT・MRIによる脳・頭蓋骨の評価
- 打撲後の経過観察とフォローアップ
「小さな傷だから」と軽視せず、特に頭を打った場合や意識が一時的に途切れた場合などは、必ずご相談ください。
頭や顔のケガは見た目以上に注意が必要なことがあります。早めの受診と適切な処置で、感染や後遺症を防ぐことができます。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にねりま脳神経外科までご相談ください。
この記事は、ねりま脳神経外科の医師が監修しています。頭部外傷、顔面外傷、切り傷の縫合、頭を打った時の対応など、お困りのことがあればいつでもご相談ください。
文責:井上剛(日本脳神経外科学会 日本脳神経外科学会専門医)
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