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脳血管性認知症

脳血管性認知症は脳の血管が障害されることで起こる認知症です。

主に脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により、脳の一部が損傷を受け認知機能が低下します。

高齢化社会の日本では、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症タイプです。

脳血管性認知症は「生活習慣病の延長線上にある認知症」とも言われ、特に高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病動脈硬化が深く関わっています。

 

分類とタイプ

脳血管性認知症には、原因となる血管障害の違いによっていくつかのタイプがあります。代表的な分類は以下の通りです。

1. 多発梗塞性認知症:複数の脳梗塞が重なることで発症。

2. 重要な部位の単一梗塞による認知症:脳の特に重要な部位が一度に障害されて発症。

3. 小血管性認知症:細い血管が障害されるもので、血管性認知症の半数を占めます。ラクナ梗塞やビンスワンガー病が代表です。

4. 低灌流性認知症:脳全体への血流が慢性的に低下することで発症。

5. 出血性認知症:脳出血が原因で発症。

小血管性認知症が特に多く、脳出血よりも脳梗塞が認知症の原因となりやすいのが特徴です。

 

原因・危険因子

最大の危険因子は高血圧です。

加えて糖尿病・脂質異常症・心房細動などの生活習慣病、喫煙・運動不足・肥満などの生活習慣も関与します。

動脈硬化が進むと、脳の細い血管が障害され慢性的な脳虚血や微小梗塞を起こします。

脳血管性認知症は、こうした血管障害が背景にあるため「生活習慣病のコントロール」が最も重要な予防策になります。

 

主な症状と経過

脳血管性認知症の特徴は、症状が階段状に進行することです。

脳梗塞など新たな脳血管障害が起こるごとに、急激な悪化とその後の安定を繰り返します。

典型的な症状は以下の通りです。

  • 歩行障害やしびれ:片麻痺、感覚障害、歩行障害など
  • 意欲低下/アパシー:自発性がなくなり、うつ病に似た印象ですが、悲壮感が乏しいのが特徴
  • 感情失禁:場違いに泣いたり笑ったりする(感情や欲求の抑制障害)
  • 巣症状/仮性球麻痺:特定の脳の部位に起こる麻痺や構音障害、失禁など
  • 実行機能障害:計画、意思決定、実行のプロセスが難しくなる
  • 注意障害:集中力が続かない、注意が散漫になる
  • まだら認知症:認知機能の低下が不均一(まだら)に見られる
  • 意識レベルの波:意識がはっきりしない時間帯や日に波がある
  • 記憶障害:新しいことを覚える記憶力(記銘力)は保たれていることが多いが、進行とともに障害される

人格の核心はアルツハイマー型よりも保たれやすく、部分的な能力の低下で「まだら認知症」と呼ばれることもあります。

 

診断と検査

診断基準としてはNINDS-AIREN(認知症、脳血管障害、両者の関連)、ICD-10、DSM-5が使われます。

診断には、脳画像検査(CT/MRI)で脳梗塞や小血管病変、ラクナ梗塞、ビンスワンガー病変を確認し、神経心理学的検査(MMSE、長谷川式など)で認知機能のまだらな障害を評価します。

診断のポイントは、「歩行障害や意欲低下が先行し、その後に記憶障害が起こる」「階段状に進行する」「アルツハイマー型との合併例も多い」などです。

 

アルツハイマー型認知症との違い

項目 アルツハイマー型認知症 脳血管性認知症
年齢 75歳以上に多い 60歳代から
性別 女性に多い 男性に多い
経過 ゆっくり単調に進む 階段状に進む
病識 ほとんどない 初期にはある
初発症状 もの忘れ 歩行障害、手足の麻痺やしびれ

危険因子

加齢や遺伝素因 高血圧
特徴 落ち着きがない 精神不安定になることが多い
認知症の性質 全体的な能力の低下 部分的な能力の低下、まだら認知症
人格 変わることが多い ある程度保たれる

 

治療と予防

治療の基本は、生活習慣病の管理と脳卒中の予防です。

高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療、禁煙・節酒、運動・食事療法が中心です。

再発予防のために抗血小板薬や抗凝固薬を使うこともあります。認知症自体への薬物療法(ドネペジルなど抗認知症薬)はアルツハイマー型ほどの効果はありませんが、一部で有効な場合があります。

リハビリテーションや心理社会的サポート、介護者支援も重要です。「予防可能な認知症」とされており、生活習慣の改善がそのまま予防につながります。

 

脳血管性認知症は、早期発見と生活習慣の見直しが予防と進行抑制のカギです。歩行障害や意欲低下など、「いつもと違う」と感じたら早めに専門医療機関へご相談ください。

 

文責:井上剛(日本認知症学会 東京都認知症サポート医)

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