脳震盪(のうしんとう)
頭を強くぶつけた後、「なんだかぼーっとする」「頭がすっきりしない」といった症状が出ることがあります。
これが脳震盪です。
意識を失わなくても、脳が揺さぶられることで起こる「脳の働きの一時的な混乱」です。
外見上は軽そうに見えても、適切な休養と観察が必要です。
脳震盪とは何か
脳震盪は、頭部への衝撃によって脳が一時的に正常に機能しなくなる状態です。
重要なポイントは、CTやMRIで出血や骨折が見つからなくても起こるということです。
頭に強い力が加わると、その衝撃で脳が揺らされ、神経同士の情報伝達が乱れてしまいます。
外から見ても傷がなく、画像検査でも異常が映らないため「大したことない」と思われがちですが、脳の中では一時的に働きが乱れています。
意識を失うのは全体の10%程度で、多くの場合は意識がある状態で発症します。
どんな時に起こるのか
- 人と衝突: タックル、肘打ち、スクリーンプレー
- 床と衝突: 転倒する、投げられる
- 物と衝突: ボール、バット、スティックにあたる
ラグビーやサッカーなどの接触が多いスポーツだけでなく、階段からの転落や自転車での転倒など、日常生活でも起こりえます。
スポーツ中の頭部外傷についてはこちらをご覧ください。
どんな症状が出るのか
症状は受傷直後から数日以内に現れることが多く、人によって様々です。
体の症状:頭痛、首の痛み、吐き気や嘔吐、めまいやふらつき、光や音がいつもより気になる、疲れやすいといったものがあります。
気持ちや考え方の変化:ぼんやりして集中できない、考えがまとまらない、記憶があいまい(受傷前後のことを思い出せないことも)、いつもよりイライラする、気分が落ち込みやすい、理由なく不安になる、眠れない・逆に眠気が強いといった症状が見られます。
これらの症状は数日で治ることが多いですが、約3割の方で1ヶ月以上、長いと3ヶ月以上続くことがあります。
このような場合は「脳震盪後症候群」と呼ばれます。
本人も気づきにくく、周囲の人が「いつもと様子が違う」と感じることで初めて分かることもあります。
特に危険な症状
以下のような徴候が1つでも見られたら、すぐに救急車を呼びましょう。
- 意識がない、または反応が鈍くなってきた
- 何度も吐く
- 頭痛がどんどん強くなる
- けいれんが起きた
- 手足に力が入らない、しびれる
- 首を痛がる
なぜ脳震盪を軽く見てはいけないのか
脳震盪で最も危険なのは、回復する前に再び頭に衝撃を受けることです。これを「セカンドインパクトシンドローム」と呼びます。
一度脳震盪を起こした後の脳は、通常よりも損傷を受けやすい状態になっています。
この状態で再び衝撃を受けると、脳が急激に腫れて命に関わる状態になることがあります。
また、脳震盪を繰り返すと、記憶力の低下、集中力の問題、気分の変化などが長期間続くことがあり、日常生活や将来のキャリアに影響を及ぼす可能性があります。
脳震盪が疑われたらどうするか
スポーツ中や事故後に「いつもと違う」と感じたら、まずその場で活動を中止します。
「少し休めば大丈夫」と自己判断せず、その日はスポーツや激しい活動を控えてください。
周囲の人は、本人の状態をメモに残しておきましょう。
いつ、どのように頭をぶつけたか、その後どんな症状があったかを記録します。
24時間は誰かと一緒に過ごし、一人にならないようにしてください。
症状が悪化する可能性があるため、定期的に声をかけて様子を確認します。
できるだけ早く医療機関を受診してください。
特に、意識を失った、記憶があいまい、頭痛や吐き気が続く場合は必ず受診が必要です。
帰宅後の過ごし方
以前は「何日も完全安静に」と言われていましたが、最新の研究(2023年アムステルダム声明)では考え方が大きく変わりました。
現在は「相対的安静」という考え方が推奨されています。
最初の24〜48時間
脳震盪直後から48時間までの間は、症状を悪化させない範囲で日常生活動作を許可されています。軽い家事(食事の準備、皿洗い)、穏やかな環境での家族や友人との交流など、無理のない範囲で活動できます。
ただし、以下のような脳に負担をかける活動は控えてください。
- 激しい運動や身体活動
- 長時間のテレビ、スマートフォン、ゲーム
- 集中力が必要な読書や勉強
症状が落ち着いてきたら
症状が軽微で日常生活に支障がなければ、早期から身体活動を開始する方が回復しやすいことがわかっています。
症状が落ち着いてきたら、軽い散歩など、少しずつ活動を増やしていきます。
ただし、頭痛やめまいなどの症状が再び出たり、悪化したりした場合は、すぐに休んでください。
お酒は厳禁です。また、医師の許可が出るまで車やバイクの運転も控えてください。
当院での対応
当院では、脳震盪をはじめとする頭部外傷後の症状評価・画像診断・経過観察を行っています。
CTやMRIによる頭部精査を行い、脳出血や頭蓋骨骨折などの重篤な損傷がないかを確認します。
また、スポーツ復帰に向けた段階的な指導や、復帰プログラムの各段階における評価、学校・チームとの連携も可能です。
「頭を打ったあとから少し変」
「数日たっても頭が重い・集中できない」
「どの段階まで進んでいいかわからない」
など、どんな軽い症状や疑問でも放置せず、お早めにご相談ください。
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文責:井上剛(日本脳神経外科学会 日本脳神経外科学会専門医)
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