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脳梗塞

"脳梗塞"とは脳を栄養する血管(動脈)が詰まってしまうこと脳の細胞が死んでしまう状態(壊死)です。

脳梗塞の症状

脳梗塞は詰まってしまう血管の場所や範囲によって異なります。
例えば運動領域の神経細胞や神経繊維の領域が詰まってしまうと「麻痺」という症状が出ます。

言葉を司る領域が障害されれば言葉が出づらくなったり、呂律が回りづらくなったりします。

感覚領域の梗塞であれば手足や顔のしびれや痛みの症状が出ます。

平衡感覚を担う小脳と呼ばれる脳に脳梗塞が起これば、めまいが症状として現れますが代表的な症状には以下のようなものがあります。

 

麻痺(顔・腕・足・体幹体の一部が動かしづらくなる)

痺れ(体の一部の感覚が鈍くなる「皮を一枚被ったような感覚」、正座後のようなピリピリ感)

めまい吐き気(ぐるぐる回るような感覚、ふわふわ雲の上を歩いているような感覚)

呂律が回りづらい

言葉が出づらい

言葉が理解しづらい

目が見えづらい(一部、または片側半分が見えづらくなる→自分では見えているつもりだが体をぶつけてしまう、車を擦ってしまう)

もの忘れ注意力集中力の低下などの認知機能低下

意識障害(反応が鈍い、眠りがち)

頭痛

このように、脳梗塞といっても梗塞を起こす場所によって症状は様々です。

通常、脳の左右で神経が交差しているため、例えば左脳に梗塞が起こると右半身に症状が出ます

脳幹(中脳・橋・延髄)や脊髄の梗塞では、身体の両側に症状が出ることもあります。
とはいえ、脳幹部も脊髄も栄養する血管の多くは左右別に作られているため、左右のどちらかに症状が出ることの方が多いです。
(これに対し出血は反対側に及ぶことがあるため、左右両方に症状が出ることが多くなります。)

脳梗塞の発症の仕方

脳梗塞は突然発症することが特徴です。

「なんとなく始まった」というよりは「〜をしていた時から」始まることが多いです。

  • 「台所仕事をしていた時に手がしびれ始めた」

  • 「電話中に急に呂律が回らなくなった」

  • 「朝起きたら片側の手足が動かなくなっていた」

 

「以前から何となく手足の具合が悪い」というような場合は、脳梗塞の後遺症ということはあるかもしれませんが、新たに脳梗塞を起こしたとは考えづらいです。

また脳梗塞を複数回起こしていると、徐々にもの忘れや注意力、集中力、判断力、物事を遂行する力などの認知機能が低下していったり、明らかなマヒはないものの歩きづらくなったり転びやすくなったりすることがあります。

また脳梗塞の場合には症状が良くなったり悪くなったりすることは少なく、症状は持続する場合が多いです。

 

一方で一時的に血管が詰まり、短時間で症状が消えることがあります。その場合は一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack:TIAと呼ばれ脳梗塞とは区別されます。

TIAを起こした場合にはその後脳梗塞を起こす可能性が高いことが知られており、やはりこの場合も適切な検査と予防治療が必要となります。

 

目の動脈に一時的に血栓が詰まると、片目だけ見えない(カーテンをしたように視野の一部、あるいは全体が黒く見えない)という状況になり、これを一過性黒内障と呼びます。

急に視野に異常を来した際は、片方の目だけが見えにくいのか(=目の血管の異常を疑う)、あるいは両目とも異常なのか(=脳の血管の異常を疑う)を自分で確認することが重要です。

脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)による症状が出現してから1日以上経って、ようやく病院を受診する患者さんもおられますが、発症直後にできるだけ早く病院を受診することにより、治療の選択肢が多くなる可能性があります。

 

脳梗塞の種類

脳梗塞の原因は大きく4つに分類されます。

  1. ラクナ梗塞 

  2. アテローム血栓性脳梗塞

  3. 心原性脳梗塞

  4. その他(血管の解離、腫瘍、自己免疫疾患、血管の先天的/後天的異常、薬剤、遺伝的な素因など)

 

1.ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、脳の細い血管(穿通枝)が動脈硬化で狭くなり詰まることで発します
特に、脳の深い部分(基底核・視床・脳幹部)に起こりやすく、梗塞の範囲は通常15mm以下です。

ラクナ梗塞の主な原因は高血圧や糖尿病です。
血圧が高い状態や高血糖が続くと、血管の壁が厚くなり、動脈硬化が進んで血流が悪化。結果として血栓ができ、血管が詰まることで脳梗塞を引き起こします。

 

2.アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、大きな血管(大動脈や頚動脈)の動脈硬化によって発生します。

動脈硬化により血管内に「プラーク(脂肪の塊)」ができ、これが破綻すると血栓が発生。血栓が脳の血管を塞ぐことで脳梗塞が起こります。

特に頚動脈の分岐部(内頚動脈と外頚動脈の分かれ道)は、動脈硬化(プラーク)が起こりやすく、アテローム血栓性脳梗塞の原因として重要です。

リスクが高い人

  • 高血圧・高脂血症・糖尿病・高尿酸血症の方

  • 喫煙習慣がある方

したがって、高血圧・高脂血症・糖尿病・高尿酸血症や喫煙習慣などがある場合は頚動脈エコー検査により動脈硬化(プラーク)の有無やその程度を知っておくことが重要です。

 

3.心原性脳梗塞

心原性脳梗塞は、心臓の中でできた血栓が脳の血管に流れ込み、詰まることで発生します

特に、不整脈の一種である心房細動がある場合、心臓内に血栓ができやすくなります。

血栓が大きいことが多く、比較的太い血管が詰まってしまうため脳梗塞の範囲も広くなりやすいです。

 

4.その他の原因

脳梗塞の原因は、動脈硬化や心臓疾患だけではありません。
以下のような病気や要因も関係します。

その他の原因

  • 悪性腫瘍 → 血液が固まりやすくなり、血栓ができやすい。

  • 膠原病(自己免疫疾患) 

  • 薬による影響

  • 妊娠
  • 遺伝的要因凝固系と呼ばれる血液を固める細胞に異常がある場合

注意が必要な人

  • 若い女性で脳梗塞を発症した場合

  • 生活習慣病がないのに脳梗塞を起こした場合

高血圧や高脂血症、高尿酸血症や糖尿病などの生活習慣病や喫煙・肥満などの生活習慣病がない若い女性などで脳梗塞を起こしてしまった場合には、血液の凝固異常や遺伝的な要因を調べる検査が必要になることがあります。

 

脳梗塞の診断

脳梗塞の診断では、早期発見正確な検査が重要です。

1. 問診と症状の確認

まず、症状がいつ・どのように始まったかどのように経過しているかを確認します。

  • 「庭仕事中に急に左半身が動かなくなって、どんどん症状が進んできた

  • 「電話で話していた時に急に呂律が回らなくなった」

  • 「朝起きたら片側の手足がしびれていた」

脳梗塞の患者さまご本人は、時として記憶が曖昧になっていたり、話せない場合もありますので、医療機関を受診するときは家族の方などに付き添っていただくことが理想的です。

 

また、以下のようなリスク因子や既往歴も確認します。

脳梗塞の既往の有無

持病の有無(高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、不整脈、心臓弁膜症など)

服用中の薬(血圧・血糖・コレステロールを下げる薬、血液をサラサラにする薬、月経困難症の薬や経口避妊薬など

 

2.神経学的診察

  • 意識の状態
  • 言葉の理解や発音の異常
  • 運動麻痺がある部位や程度
  • 感覚の障害がある部位や程度
  • 歩行の状態(バランスが取れるか)

などを調べ、脳や脊髄のどの部位が障害を受けているかを推定します。

 

3.画像診断(MRI・MRA)

マヒや痺れ、めまいや呂律障害などの症状から脳梗塞を疑った場合、診断に最も役立つのがMRI検査です。

✅MRI(拡散強調画像:DWI)

    • 発症30分後から2週間以内の脳梗塞を正確に診断可能

✅MRA(脳血管の流れを描出するMRI)

    • 脳血管の詰まりや狭窄の有無を確認

 

4.追加の検査

頚動脈エコー:頚動脈の動脈硬化やプラークを確認

○心電図・ホルター心電図(24時間心電図):心房細動などの不整脈を検出

○心エコー・経食道心エコー・下肢静脈エコー:血栓を調べる

○血液検査:高脂血症、糖尿病、高尿酸血症などのリスク因子を評価

○脳血管造影(カテーテル検査):血管の状態を詳しく評価

○SPECT:脳の血流評価(アイソトープを用いた検査)

 

脳梗塞の治療

脳梗塞の治療は発症からの“時間”が重要です。
脳の血管が詰まり、脳に十分な血液が供給されないと、神経活動は停止し、脳組織の一部が破壊されます。

そのため、早期に脳の血流を再開させること(超早期再灌流)が脳梗塞治療の基本です[Rha JH, et al. Stroke. 2007;38:967-73.]。

1. 超急性期治療(発症から数時間以内)

  • 血栓溶解療法(t-PA療法)

    • 発症4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬(t-PA)を点滴。

    • ただし出血副作用があり、全員に使えるわけではありません

  • 血管内治療(カテーテル治療)

    • 太い動脈からカテーテルを挿入し、血栓を回収・吸引する治療。

 

2. 慢性期治療・再発予防

t-PAによる治療や血管内治療を行わなかった場合や、行なった後には脳梗塞のタイプに応じて

  • 抗血小板薬(こうけっしょうばんやく):血液をサラサラにし、血栓ができにくくする薬
  • 抗凝固薬(こうぎょうこやく):抗血小板薬とは別の作用で血液をサラサラにする薬
  • 脳保護薬(のうほごやく):脳に血液が流れないことで起こるダメージを抑える薬
  • 抗脳浮腫薬(こうのうふしゅやく):脳のむくみを抑える薬

などの薬剤を組み合わせて、治療を行います。

t-PAを使用した場合には、血液をサラサラにする抗血小板薬・抗凝固薬は、投与後24時間経過してから使用を開始します。


状態が安定した後は、再発予防を目的とした治療と後遺症への対処、脳梗塞を起こしやすい因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙)の適切なコントロールが重要になります。

また、検査の過程で頚動脈に動脈硬化のため狭くなった箇所が見つかり、これが原因で脳梗塞の再発が起こる危険性が高いと判断される場合には、狭くなった血管の掃除をすることや、ステント(金属製の網目状の筒)を狭くなった場所に置く手術で血管を広げます。

後遺症対策としては、症状に応じたリハビリテーション、福祉サービスの適切な利用が重要となります。

 

まとめ

脳梗塞は脳血管が詰まることによって起こる、突然のマヒ、痺れ、めまいを呈する病気です。

診断にはMRI検査が有用で高血圧や高脂血症、糖尿病・喫煙がリスク因子です。

早期診断、治療により症状を改善できる可能性があり、後遺症対策としてリハビリや福祉サービスの利用が重要です。

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