脳出血
脳出血とは
脳出血とは脳内の血管が破れて出血し、血液が脳の組織を圧迫することでさまざまな神経症状を引き起こす病気です。
原因の約7割は高血圧によるものであり、被殻、視床、小脳、脳幹といった部位に多く発生します。
高齢化や生活習慣の変化により、発症リスクのある方は増加傾向にあります。
脳出血の原因と頻度
脳出血の原因として最も多いのは「高血圧性脳出血」で、全体の約60〜70%を占めます。
長年にわたる高血圧によって細い動脈が傷み、破れてしまうことで発症します。脳の深部(被殻・視床など)に好発し、もっとも典型的な脳出血といえます。
高齢者ではアミロイドβというたんぱく質が血管に沈着して脆くなる「脳アミロイドアンギオパチー(CAA)」も重要な原因の一つです。
これは皮質下の出血に関与し、高齢者の皮質下出血の約3〜5割を占めるとされます。
また、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している方では、薬剤の影響による出血(薬剤性脳出血)も見られます。全体の10〜15%程度に関与し、年々増加傾向にあります。
その他、若年者に多い脳動静脈奇形(AVM)や、動脈瘤破裂に伴う脳実質内出血、白血病や血小板減少症などの血液疾患、頭部外傷、不明な原因(特発性)なども脳出血の原因となります。
【ポイント】
- 脳出血の約7割は高血圧が原因であり、血圧管理が最も重要な予防策です。
- 高齢者ではアミロイドアンギオパチーによる皮質下出血が増加傾向にあります。
- 抗血栓薬の使用が増えるなか、薬剤性の脳出血も無視できない原因です。
- 若年者では動静脈奇形などの血管奇形を念頭においた検査が必要です。
高血圧性脳出血の好発部位と特徴
高血圧による脳出血は主に以下の部位に好発します。
- 被殻(全体の40〜50%):もっとも多く、症状が軽い場合もありますが、出血が拡大すると半身の麻痺や感覚障害が強く出現します。
- 視床(20〜30%):しびれや麻痺、感覚障害が中心となり、しばしば後遺症が残ります。合併症として急性水頭症を発症することがあり、この場合には緊急の外科的介入が必要となる。
- 小脳(10〜15%):ふらつき、頭痛、嘔吐、意識障害、歩行障害などを起こし、血腫の大きさによっては緊急手術が必要です。
- 脳幹(特に橋:5〜10%):生命維持機能を司るため、出血が起こると意識障害や呼吸障害など重篤な症状に直結し、予後が非常に悪いことが知られています。
主な症状
脳出血では、突然の激しい頭痛、片側の手足の麻痺やしびれ、言葉が出にくい、意識の低下や混乱、視覚異常やめまいなどの症状が見られます。
特に特徴的なのは発症が突然である点です。前兆がないことが多く、日常生活の中で突然倒れるような形で発症するケースもあります。
軽症の場合は頭痛やめまい程度にとどまりますが、重症では片麻痺、構音障害、昏睡、呼吸不全などを引き起こします。
発症後1週間ほどは脳浮腫が進行し、症状が徐々に悪化する場合もあるため早期の対応が非常に重要です。
これらの症状が現れた場合、速やかに医療機関を受診することが重要です。
診断方法
脳出血の診断には、主に以下の画像検査が用いられます:
- CT検査:出血の有無や範囲を迅速に確認できます。
- MRI検査:出血の詳細な部位や原因の特定に有用です。
- MRA(磁気共鳴血管撮影):血管の異常や動脈瘤の有無を評価します。
脳出血の診断において画像診断は不可欠です。CT検査は出血の有無や範囲を迅速に確認できるため、救急医療の現場では第一選択となっています。
MRAは、特に若年者や非典型的な出血パターンを示す症例において、血管奇形の除外診断として重要な検査となります。
治療方針
急性期の治療
- 血圧管理
発症直後は血圧の厳格な管理が最も重要です。目標は収縮期血圧140mmHg未満で、7日間ほどその状態を維持します。降圧には、カルシウム拮抗薬のニカルジピンや硝酸薬の微量点滴静注が用いられます。 - 手術適応
以下のような場合、手術が考慮されます。
・被殻出血で血腫量が31ml以上
・小脳出血で出血直径が3cm以上
・皮質下出血で脳表から1cm以内に存在し、意識レベルが低下している場合
- 頭蓋内圧管理
頭部を30度挙上し軽度の鎮静管理を行います。またマンニトールや高張食塩水の投与による浸透圧療法が実施されます。
- 抗血栓療法の中止・拮抗
抗血栓療法は原則として中止され、必要に応じてビタミンKや新鮮凍結血漿(FFP)などで拮抗処置が行われます。

慢性期の治療と予防
再発予防には高血圧の管理が欠かせません。さらに生活習慣の見直しや、必要に応じて抗血小板薬の調整、継続的なリハビリテーションによって、機能回復と生活の質の改善を目指します。
予防と生活習慣の改善
脳出血の最大の予防法は、高血圧をきちんと管理することです。
定期的に血圧を測定し、医師と相談しながら必要に応じて治療を受けましょう。
また、禁煙、節酒、適度な運動、減塩を意識した食生活も重要です。
塩分や脂質の摂取を控え、野菜や果物を積極的に取り入れることが勧められます。
ねりま脳神経外科の取り組み
脳出血は早期診断と適切な急性期治療、特に血圧管理と脳浮腫コントロールが症状悪化の防止に重要です。
予後は出血部位と出血量に大きく依存しますが、適切なリハビリテーションにより機能回復が期待できる症例も存在します。
最も重要なのは予防であり、高血圧管理を中心とした危険因子のコントロールにより、脳出血のリスクを大幅に減少させることが可能です。
当院では、最新のガイドラインに基づいた診療を行っております。急性期から慢性期まで、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療を提供し、社会生活の維持と再発予防をサポートいたします。
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