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緊張型頭痛

緊張型頭痛について

緊張型頭痛(Tension Type Headache)は慢性的な頭痛の中で最も多くの人が経験する頭痛で、日本人の約22%が経験するという報告があります。

世界人口では38%、成人に限ると42%にも昇ると言われています。一般的には年齢は30〜70歳代に多く、男性より女性の方が多い(男女比4:5)ものの片頭痛ほどの男女差はありません。

緊張型頭痛は頻度が多く、日常生活への影響も大きにも関わらず、これまで日常生活の一部と考えられてきており“治療する”、もしくは“治療できるもの”と捉えられてきていない側面があり、医療機関に受診せず耐えている方が多いのが現状です。

ここで正しい情報の提供をし、治療が必要な方が頭痛外来を受診できるようお手伝いができればと思います。

 

 

緊張型頭痛はなぜ起こるのか?

緊張型頭痛のメカニズムはまだ完全に解明されたわけではありませんが、これまで分かっている事は末梢性因子中枢性因子が存在するということです。

末梢性因子とは頭を支えている筋肉の強張りが強くなる(硬くなる)ことで引き起こされる頭痛です。

 

「肩こり」を自覚していることの方が多いですが、「肩こり」の自覚はないにも関わらず筋肉が強張り、頭痛を来している場合も少なくありません。

また頭や首、肩を触ったり押したりすると痛みがある場合には緊張型頭痛の可能性が高いと考えられています。

凝っている状態が長く続いたり、血流の低下などが起こったりすると筋肉(平滑筋)やスジ(腱)あるいはそれらを栄養している血管が痛みを感じるようになってしまいます。

もう一つが中枢性因子です。中枢性因子とは痛みを感じる神経(主に三叉神経)や脳の過敏性のことです。

これを医学的には“閾値の低下”と言います。

頭や首、肩の筋肉の緊張が長く続くと、三叉神経や痛みを感じる大脳皮質感覚野や視床と呼ばれる脳が痛みに対し敏感になっていってしまい、頭痛をより感じやすくさせてしまうのです。

 

緊張型頭痛の特徴や診断は?

緊張型頭痛の特徴は両側で鈍い、圧迫感もしくは締め付け感です。「はちまきやヘアーバンド、帽子で頭を圧迫される」、「頭や肩に重いものがのっている」などと表現されることがあります。

痛みは徐々に起きて、程度は軽いことが多く頭全体や肩凝りとして感じたりします。

仕事や家事、勉強などたいていの活動は行うことができます。
ただし重症になると片頭痛のようにズキズキしたり気持ち悪くなったりすることもあり片頭痛と区別することが難しい場合も多々あります(両方持っている人もたくさんいます)。

 

国際頭痛分類において緊張型頭痛は以下のように定義されています。

A.30分〜7日間持続する

 

B.以下の4つのうち少なくとも2項目を満たす

両側性

圧迫感もしくは締め付け感(非拍動性)

軽度から中等度の強さ

日常的な動作により悪くならない

 

C.以下の両方を満たす

気持ち悪さはない(慢性になってしまった場合は“あり”)

光か音のいずれかに対して敏感になる(慢性の場合30%)

緊張型頭痛発症の危険因子や誘因は以下の11個が知られています。

疲労 ストレス・精神的緊張 姿勢異常 臭い、光、煙
天候の変化 アルコール摂取 月経周期

肥満

運動不足 喫煙 睡眠障害  

一般的に緊張型頭痛は加齢とともに少なくなっていくことが知られていますが、50歳以降に発症するケースも決して稀ではありません。

 

緊張型頭痛の治療について

緊張型頭痛が月に1日以下の場合(年間12日以下)の場合で日常生活に支障がない場合には治療の必要はありません。

しかし月に1日以上頭痛があり日常生活に支障をきたす場合には治療が必要となります。
片頭痛と同様に“急性期治療”と“予防治療”に分けられ、それぞれ薬物療法と非薬物療法があります。 

 

急性期治療

片頭痛と同様にNSAIDs(エヌセイズ)とアセトアミノフェンが主体となります。

NSAIDsとの併用により効果が増強する作用を持つカフェイン配合の複合鎮痛薬は、依存性があるので使用時には注意が必要です。


またアセトアミノフェンやNSAIDsを1週間に2~3日以上使用している場合には片頭痛時と同様に“薬物使用過多による頭痛、慢性頭痛”(MOH)となってしまい、より治療が困難となることがあるので注意が必要です。

慢性的な緊張型頭痛にはストレスや不安症・うつ病の合併も多く、鎮痛薬が効きづらくMOHに陥るケースが多いため予防治療や非薬物治療が必要になリます。

予防治療

緊張型頭痛が月に1回以上の状態が3ヶ月以上続く場合(年間12日以上)には予防療法の適応となります。

日本で緊張型頭痛に対し使用が認められている予防薬は三環系抗うつ薬であるアミトリプチン(トリプタノール®️)のみです。
アミトリプチンはこれまでの研究でも高い有効性を示しております。

アミトリプチンは“口が渇く”、“眠気”といった副作用が出る場合があるので少量より開始し,
半年から1年ごとに治療を続けるか中止するかの判定を行うこととなっています。

 

お薬以外の治療・対策

お薬以外の緊張型頭痛の治療に以下のようなものがあります。

1.姿勢に気をつける(うつむき姿勢)

肩こりや緊張型頭痛はうつむき姿勢によって起こりやすいことが知られています。

頭の重さを支えるために僧帽筋をはじめとする首の後ろ側の筋肉が強張ってしまいます。
首や僧帽筋の筋力が弱く、なで肩や肥満体型の方は頭痛になりやすいことがわかっています。

普段の姿勢(脳天を紐で上から吊られているような姿勢)に気をつけ、腕はなるべく肘掛けに乗せておくように心がけると良いでしょう。

片側の後頭部や首が痛くなる場合には、無意識に頭を傾けていることが多かったり、職場環境や家での家具の配置などから、どちらかに傾いていたり同じ姿勢をとっていることが多いために起こることがあります。

片側が痛くなる場合には、一度生活環境や普段の姿勢を見直してみましょう。

2.適度な筋力増強運動をする

腕立て伏せや逆立ちなどで頭を支えている僧帽筋をはじめとする首肩の筋肉を鍛えます。

筋肉を鍛える動作やストレッチは血流も多くなりますので一石二鳥です(運動や筋力トレーニングはご自身の体調に合わせて無理のない範囲で行ってください)。

頭痛体操は日本頭痛学会が考案した緊張型頭痛・片頭痛のいずれにも効果が期待できる体操です。短時間でできますので昼休みや退勤時に行うと良いでしょう。

3.睡眠の質を改善する

睡眠不足や睡眠時の姿勢は朝起きた時の頭痛の原因となります。

睡眠時間は人それぞれ、適する時間が異なるようで5~6時間で問題ない人もいれば8時間程度寝ないと日中の眠気やだるさ、思考力や集中力が落ちてしまったりする人もいます。

目覚めたときにスッキリ起きられ、日中の思考力・集中力が保たれる睡眠時間を確保するようにしましょう

また寝る直前までスマホやテレビを見ていたり、直前までお酒を飲んでいたり食事をしたりしていると睡眠の質は下がってしまいます。

寝る2時間ぐらい前から刺激を減らしリラックスすることで(副交感神経優位にしていく)質の良い睡眠をとるようにしていきましょう。

マットレスや枕、ブランケットや布団を交換した際にご自身の体型や姿勢に合っていないと、寝ている間に疲労が溜まってしまい頭痛の原因となってしまう場合がありますので注意が必要です。

4.首や肩の血流を良くする

ゆっくりお風呂に入る、肩に温湿布を貼る、湯たんぽなどで温めることも有効な方法です。

併せて呼吸法や瞑想などのリラクセーション法により交感神経の覚醒を制御できるようになることで頭痛を改善する方法です。

 

他にも頭痛の診療ガイドラインでは以下のような方法が掲載されています。
ただしこれらはまだまだエビデンスレベルが低いものが多いのが現状です。
ご自身の身体に合うものがあれば、取り入れてみても良いかもしれません。

① 精神療法および行動療法

※1筋電図バイオフィードバック療法(エビデンスの確実性A)

※2認知行動療法(マインドフルネス)(エビデンスの確実性C)

リラクゼーション法(エビデンスの確実性C)

② 理学療法

運動プログラム(頭痛体操:エビデンスの確実性B)

マッサージ・頸部指圧

・超音波、電気刺激

・姿勢矯正

口部、顎部の機能異常に対する治療(噛み合わせなど)

温冷パック

鍼灸(エビデンスの確実性C)

 

[※1筋電図バイオフィードバック療法とは筋電図により筋肉の活動電位を患者様に提示し、筋緊張を自覚することでコントロールを促す方法で、積極的なリラクセーション法と併用することで長期的な効果が得られやすいとされています。] 

[※2認知行動療法とは患者様にストレスと頭痛の関係について認識していただく方法で様々なエクササイズが報告されていて有効性はあると考えられていますが、現時点では明確なエビデンスはありません。]

 

急性期治療の薬剤一覧表

薬剤 一般名 品名

エビデンスの

確実性

推奨容量
 

アセトアミノフェン

カロナール®️

A

500~1000mg/回

NSAIDs

アスピリン・ダイアルミネート配合

バファリン®️

A

500~1000mg/回

メフェナム酸

ポンタール®️

A

500mg/回

ロキソプロフェン

ロキソニン®️

A

60mg /回

インドメタシン・ファルネシル

インフリー®️

A

200mg/回

ジクロフェナク

ボルタレン®️

A

12.5~50mg/回

イブプロフェン

ブルフェン®️

A

100~200mg/回

ナプロキセン

ナイキサン®️

A

100~300mg/回

複合鎮痛薬

カフェイン配合

SG顆粒®️

B

65~200mg/回

(カフェイン量)

筋弛緩薬

チザニジン

テルネリン®️

B

3~6mg/日

選択的COX-2阻害薬

セレコキシブ

セレコックス®️

C

100~200mg/日

文責:井上剛(日本頭痛学会 日本頭痛学会専門医

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