動脈瘤
〜くも膜下出血の主な原因となる血管のふくらみ〜
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部が血管壁の弱い部分からふくらみ、『こぶ』のような形をしたもののことを指します。
自覚症状がないまま経過することが多いですが、破裂すると「くも膜下出血」を起こし、重篤な状態になる可能性があります。
どれくらいの人に見つかるか
未破裂脳動脈瘤は、脳ドックや検査の際に偶然発見されることが多く、日本人のおよそ2〜5%に存在するとされています。
脳卒中の家族歴がある方では、発見される割合がやや高い傾向にあります。
脳動脈瘤ができる原因
- 加齢(血管壁の変性)
- 高血圧による血管への慢性的な圧力
- 喫煙など生活習慣の影響
- 動脈硬化
- 遺伝的素因(遺伝などによる動脈壁の弱さ)
- 先天性の血管異常や膠原病などの基礎疾患
好発部位
脳動脈瘤は、脳の血管が枝分かれする部位(分岐部)にできやすい傾向があります。特に以下の部位に多く発生します。
- 内頚動脈-後交通動脈分岐部(ICA-Pcom)
最も多く見られる部位の一つ
- 前交通動脈部(Acom)
小さくても破裂しやすい傾向あり
- 中大脳動脈分岐部(MCA)
比較的大きめの動脈瘤ができやすい
- 椎骨-脳底動脈分岐部(VA-BA)
比較的まれ
症状について
破裂することは稀なので、心配しすぎることがありません。
しっかりと定期的に経過をみて、適切なタイミングで治療ができるようにしましょう。
高血圧・喫煙・過度の飲酒が動脈瘤を大きくすると言われているのでこれらを避け、それ以外は日常生活に制限などは設けずに人生を楽しみましょう。
ただし、突然の激しい頭痛や普段と違う頭痛を感じた時は病院受診を忘れずに。
現在のガイドライン(医学的知見に基づく方針)では大きさが5mm以下の動脈瘤は経過観察します。
破裂リスクの判断
未破裂脳動脈瘤はすべてが破裂するわけではありません。
破裂の危険性は、動脈瘤の大きさ・部位・形状・既往歴によって変わります。
- 動脈瘤の大きさ(5〜7mm以上でリスク上昇)
- 部位(AcomやPcomは小さくてもリスクが高い)
- 形状(不整形、ブレブと呼ばれる小さな膨らみの有無)
- 高血圧、喫煙習慣の有無
- くも膜下出血の家族歴
場所と大きさごとの1年間破裂率(%) | ||||
3-4mm |
5-6mm |
7-9mm | 10-24mm | |
中大脳動脈 | 0.23 | 0.31 | 1.56 | 4.11 |
前交通動脈 | 0.90 | 0.75 | 1.97 | 5.24 |
内頚動脈 | 0.14 | 1.00 | 1.19 | 1.07 |
内頚動脈-後交通動脈 | 0.41 | 0.46 | 3.19 | 6.12 |
脳底動脈先端部 |
0.23 | 0 | 0.97 | 6.94 |
椎骨-後下小脳動脈 椎骨動脈合流部 |
0 | 1.37 | 0 | 3.49 |
その他の場所 | 0.78 | 0.50 | 0 | 0.437 |
診断と検査
- MRA(MR血管撮影):非侵襲的に脳血管の形を描出
- CTアンギオ(CTA):造影剤を使用して血管の状態を確認
治療法
脳動脈瘤が見つかった場合、破裂のリスクや全身状態などをもとに、次のような治療法が選択されます。
- クリッピング術(開頭手術)
頭を開いて動脈瘤の根元に金属クリップをかけて、血流を遮断する方法です。
確実な遮断が期待できる一方で、手術侵襲が大きくなります。
[入院期間は1−2週間程度]
- コイル塞栓術(血管内治療)
カテーテルを動脈内から挿入し、動脈瘤内にプラチナ製のコイルを詰めて塞ぐ方法です。
体への負担が少なく、高齢者やリスクの高い方にも適応されやすい治療です。
[入院期間は数日から1週間程度]
- ステント留置術(Flow Diverter stent, )
カテーテルを動脈内から挿入し、網目の細かいステントを動脈瘤のある血管に置くことで動脈瘤に血流が入らないようにする方法です。
広頸動脈瘤(wide neck)、複雑な形の動脈瘤、再発動脈瘤などに適応があります。
[入院期間は数日から1週間程度]
治療方法の選択は動脈瘤の場所・大きさ・患者様の年齢・持病などをもとに総合的に判断されます。
手術を担当する医師とそれぞれのメリット・デメリットについて説明を聞いた上で決めていきましょう。
経過観察と再発リスク
治療を行わない場合や治療後も、定期的なMRI・MRAによる経過観察が必要です。
まれに新たな動脈瘤が形成されたり、再発することがあるため、半年~1年ごとの画像評価が推奨されます。
予防と生活管理
脳動脈瘤の発生や破裂を予防するためには、以下のような生活習慣の改善が有効です。
- 高血圧の管理
血圧が高い状態は破裂リスクを高めます。薬による適切なコントロールを心がけましょう。
- 禁煙の徹底
喫煙は動脈瘤の形成・破裂の両方に関与するとされています。
- 適正体重の維持
肥満は血管への負担を高めます。
- ストレス・過労の回避
急激な血圧上昇を避けるため、リラックスや十分な休息が大切です。
- 定期的な検査
家族歴がある方やリスクのある方は、MRIやMRAなどでのチェックが推奨されます。
まとめ
脳動脈瘤は、発見されても必ずしも治療が必要なわけではありませんが、破裂した場合のリスクは極めて大きくなります。
そのため、脳ドックや画像検査で早期に発見・適切に管理することがとても重要です。
高血圧や喫煙といった生活習慣病を管理し、必要に応じて専門医と相談のうえで治療や経過観察を行うことが重要です。
脳卒中の家族歴がある方や検査で指摘された方は、脳神経外科での評価を受けましょう。
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