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スポーツと脳震盪

スポーツ中の頭部への衝撃によって起こる脳震盪は、適切な対応をしないと選手の将来に大きな影響を与える可能性があります。

このページでは、指導者や保護者が知っておくべき脳震盪の見分け方と対応方法について解説します。

脳震盪とは

脳震盪は、頭部や体への衝撃によって脳が一時的に正常に機能しなくなる状態です。

意識を失うのは全体の10%程度で、多くの場合は意識がある状態で発症します。

CTやMRIなどの画像検査では異常が見られないことが多いですが、脳の働きには一時的な乱れが生じています。

脳震盪10の徴候

まずは選手をよく観察し、以下のような症状がないかチェックしましょう。これらの徴候が1つでも見られたら、脳震盪を疑う必要があります。

徴候 具体的な様子
① 意識消失 一瞬でも意識を失った
② 動作の遅れ 倒れて動かない、立ち上がるのが遅い
③ 放心状態 ぼーっとしている、うつろな表情
④ ふらつき フラフラしている
⑤ 動きの異常 動きが遅い、ぎこちない
⑥ 反応の遅れ 受け答えが適切でない、遅い
⑦ 感情の変化 より感情的になる、ふだんよりイライラしている
⑧ 混乱 混乱している
⑨ 見当識障害 対戦相手がわからない
⑩ 記憶障害 衝撃を受けた前後のことが思い出せない

 

記憶の確認(13歳以上の選手が対象)

以下の質問に全て正しく答えられないときは、脳震盪を疑います。

  • 今日はどこの競技場・会場にいますか?
  • 今は試合の前半ですか、後半ですか?
  • 先週・前回の対戦相手は?
  • 前回の試合は勝ちましたか?
  • この試合で最後に点を入れたのは誰ですか?

重症度の目安

脳震盪は、意識消失の有無や記憶障害の持続時間により、おおよそ以下のように分類されます。

重症度 主な特徴 意識消失 記憶障害の持続時間
軽度(Grade 1) 一時的な混乱のみ なし 30分未満
中等度(Grade 2) 短時間の意識障害または記憶障害 数秒〜数分 30分〜24時間
重度(Grade 3) 明確な意識消失または長時間の記憶障害 数分以上 24時間以上

※重症度はあくまで目安であり、症状の持続や悪化があれば速やかに医療機関を受診してください。

 

すぐに救急車を呼ぶべき症状(RED FLAGS)

以下の症状が1つでも見られたら、すぐに救急車を呼びましょう。

症状 具体的な状態
首の痛み 首が痛い、押さえると痛む
意識障害 一瞬でも意識を失った、反応が悪くなってくる
視覚異常 ものがだぶって見える
運動障害 手足に力が入らない、しびれる
嘔吐 嘔吐する
頭痛の悪化 強い頭痛、痛みが増してくる
精神状態の変化 落ち着かず、イライラして攻撃的
けいれん 発作やけいれんがある

徴候が見られた時の5つのステップ

脳震盪の徴候が見られても、選手は「大丈夫です」と言う傾向があります。

選手に徴候が見られた直後は安全を考えて以下のステップで対応しましょう。

ステップ 対応内容
STEP1 選手をプレーから外す
「脳震盪10の徴候」が1つでも見られたら、その選手をプレーからすぐに外す。その日はプレーに戻してはいけません。
STEP2 RED FLAGSでチェックする
脳震盪以上のケガをしていないか確認。1つでも当てはまるようなら救急車を呼ぶ。
STEP3 今の状態を確認する
脳震盪になった時の状況や「脳震盪10の徴候」、現在の自覚症状などを確認し、記録(メモ)する。
STEP4 脳神経外科医に診てもらう
コーチや保護者が重症度を判断せず、STEP3で記録した内容を脳神経外科医に伝え、診察してもらう。
STEP5 保護者へ説明する
選手に付き添っていた人が脳震盪になった時の状況を保護者に伝える。

24時間以内の対応

脳震盪が疑われた場合、短時間で症状が回復した場合も含めて、以下のような対応が望ましいとされています。

タッチライン沿い、ベンチあるいは控室などで休息をとり、この間は頻回に選手の状態をチェックします。

受傷時に数秒単位以上の意識消失や健忘があった場合には、たとえ意識が正常に復したと思われても病院へ搬送することが望ましいです。

頭痛、吐き気、嘔吐などが新たに出現してきたり、一向に改善しない、あるいは悪化するようであれば、専門施設へ搬送してください。

これは脳震盪に併発し得る外傷性頭蓋内出血の可能性を考慮してのことです。

経過が良好のときは帰宅を許可しますが、24時間以内は単独での生活は避け、のちに頭痛、吐き気などが生じた場合には即座に病院を受診するように指導してください。

帰宅後の過ごし方

帰宅後は脳や体を疲れさせるような行動は避けてください。

必ず誰かが見守り、選手を1人にすることは避けましょう。

最新の研究(2023年アムステルダム声明)では、最初の24〜48時間は症状を悪化させない範囲で軽い日常生活動作(軽い家事、穏やかな環境での交流など)は許可されていますが、以下のような活動は控えてください。

避けるべき活動

種類 具体例
身体活動 走る、自転車をこぐ、泳ぐなど
認知活動 学業、宿題、読書、長時間のテレビ鑑賞、ビデオゲームなど

その他の注意点

  • 少なくとも最初の1〜2時間は、ひとりきりにしない
  • 飲酒は禁止
  • 処方薬も市販薬も、原則として飲まない
  • ひとりで家に帰さない。責任ある大人が付き添う
  • 医師からの許可があるまで、バイクや自動車を運転しない

※シャワーは問題ありません

不安定になった選手への接し方

試合や練習に参加できないことで、抵抗したり、怒ったりする選手には、プレーへ戻ることで起こる危険性について以下の3つのポイントで説明しましょう。

ポイント 説明内容
1. 状況をきちんと説明する 今は症状がなくても、後で症状が重くなる例があることを紹介する
2. 必ず回復することを説明する 安静にしていれば日ごとに回復することを説明する
3. サポートし、励ます 必ずそばにいて復帰するまで見守ることを約束する

脳震盪からの段階的復帰

脳震盪と診断あるいは疑われた場合には、すぐに練習に復帰せず、段階的なプログラムを組んで復帰します。

復帰の目安

  • 成人:最低14日
  • 小児(U19以下):最低14日
  • 最早競技復帰可能日:21日後

※ 各ステージは最低24時間を要し、症状出現時は前のステージに戻る

段階的復帰プログラム

ステージ 活動内容 注意点
ステージ1
活動なし
体と認知機能の休息 24〜48時間後からは症状を悪化させない範囲で軽い日常生活動作は可
ステージ2
軽い有酸素運動
最大心拍数70%以下の歩行、水泳、室内サイクリングなど 筋力トレーニングは避ける
ステージ3
スポーツに関連した運動
ランニングなどのトレーニング 頭部への衝撃となる活動は控える
ステージ4
接触プレーのない運動
パス練習など複雑な訓練で運動強度を強める 筋力トレーニングを軽い負荷から開始
ステージ5
接触プレーを含む練習
医学的チェック後、通常練習を行う この段階に進む前に医療従事者の確認を推奨
ステージ6
競技復帰
通常の競技参加 復帰後も体調の変化に注意

重要な注意点

  • 各ステージには最低1日を費やす
  • 各ステージで症状が出現した場合は、24時間の休息をとり、症状が生じていなかったステージから再開
  • 判断に迷う場合は、早い時期に専門医を受診
  • 12ヶ月以内に2度目の脳震盪を起こした場合や、回復が長引く場合は、脳震盪の治療経験のある医師の許可が出るまで競技には参加しない

学業復帰について

教員、養護教諭、保護者が協力し、体調の変化を察知する体制をつくることが大切です。

脳に負担をかけないよう、休憩をとるように声掛けしていきましょう。

仕事や学業復帰ができたら、上記のスポーツ活動への段階的な競技復帰メニューを実行します。

当院での対応

当院では、脳震盪をはじめとする頭部外傷後の症状評価・画像診断・経過観察を行っています。また、スポーツ復帰に向けた段階的な指導や、学校・チームとの連携も可能です。

「頭を打ったあとから少し変」「数日たっても頭が重い・集中できない」「どの段階まで進んでいいかわからない」など、どんな軽い症状や疑問でも放置せず、お早めにご相談ください。

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文責:井上剛(日本脳神経外科学会 日本脳神経外科学会専門医)

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